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D.C.S.B.〜永劫の絆〜
Page28
奔る閃光。

それに追い付けたのは、精神という名の視界のみ。

肉体が反応したときは、既に事が遅かった。


刹那「がっ―――あ――――ギッ――――」


左腕に走る痛み。

そこに視線を落とすと、そこには腕の外側から少しだけ抉られた傷跡が赤い鮮血とその肉を覗かせていた。

痛みを必死に堪えて状況を分析する。

自分の腕に起こった現象。

そのことについては説明がつく。


アリオーシュ「どうした?俺程度の相手は敵ではないのだろう?」


涼しげに自身の背後でそう口にするアリオーシュ。

そんな彼を忌々しげに睨み付ける。

あるのは驚愕と絶句。


刹那「(嘘だろ………速過ぎるっ……!一瞬も見えなかったっ………)」


驚愕は敵の異常なまでの速度。

刹那にして一瞬の時を移動したかのような迅さは、すでに彼らの知るところの迅さではない。

既に異常を通り越しているだけに、言葉は出てくるわけもなく、絶句の一言しかない。


アリオーシュ「どうやら、意外な結果だったようだな。俺がどうやってその腕を抉ったか、理解しているわけではあるまい?」

刹那「……っ」


驚愕に囚われていた思考はアリオーシュの言葉によって正常さを取り戻し、事の重大さを次々と積み立てていく。

よく視れば、彼から感じられる霊圧は破面のソレと似ている。

つまり、導き出される答えは―――


刹那「…………確かに、今の俺には全く反応出来なかった攻撃だ。けど、全部見えなかったってわけじゃねえ」

アリオーシュ「ほう。それは存外、こちらとしては驚愕に値する」

刹那「んなことはどうでもいい。一つ聞かせろ。テメエ、破面だろ」

アリオーシュ「いや、違うな。俺は、破面であって破面ではない存在だ」

刹那「ってことは、テメエは親父と同種ってわけか。なるほど、どうりで霊圧の感じが似てるわけだ」

アリオーシュ「しかし、俺は完全な破面に近い存在だ。故に―――――」

刹那「っ!?」


視界からアリオーシュの姿が消える。

しかし、今度は動揺などしない。

理屈は解っているのだ。

カラクリさえ読めているのなら、その場の対応など今までと変わらない。


刹那「………――――響転か。完全な破面に近い分、破面達固有の技も使えるってわけだ」

アリオーシュ「その通りだ。だが、所詮はその程度。それ以上というわけではない」


再びぶつかり合う刃と刃。

火花を散らし、互いを散らそうと刃は奔る。

ビリビリと感じられる衝撃は今までの比ではなく。

一瞬の気の緩みが死に繋がることを、この場で再認識させられるほどのものだ。


アリオーシュ「どうやら、俺の速度について来られるようになったようだな。だが――――、“この程度”について来られるのが、そんなに嬉しいことか?」

刹那「なっ!?」


今までとは比較にならないほどの霊圧。

それに比例するかのようにアリオーシュの全体の速度が上昇する。

さっきまでは集中して目を凝らしていれば見えていた攻撃が、今では全く予想できない攻撃へと切り替わる。

風が振動する感触が肌を振るわせる。

それを鍵として予測する。


刹那「く……!?」


真上に防御の態勢を取る。

瞬間、予測通り真上より振り下ろされる一刀。

だが、両腕と剣にかかる重さは今までの比ではなく、一瞬でも気を抜けばその重さに圧し潰されるほどの重圧が刹那を襲う。


刹那「ぐ……が………!」

アリオーシュ「やはり、所詮は人間か………」


憐れむような声でアリオーシュは自身の攻撃を防いでいる刹那を見下ろす。

その瞳には、なんの感情も篭ってなどいなかった。

落胆も失望も、なにも。

なに一つ、瞳に宿る感情はない。

次の瞬間、アリオーシュの体躯が大きく飛び退く。


刹那「なんの………つもりだ…っ」

アリオーシュ「せめてもの慈悲だ。俺の解放でその命を鎖(とざ)してやろう」

刹那「………――――な、にっ」

アリオーシュ「終焉(おわ)れ、『神殺闇龍(クロウ・クルウワッハ)』」


告げられる真名。

この名を以って、世界は終焉へと歩み出した。

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