D.C.S.B.〜永劫の絆〜 Page23 染め上げられていく世界。 それは、彼らの『視界』という名の世界を染めていった。 熱を感じる。 それは徐々に神経にまで至り、内側から溶かされていくようなゾッとした感覚が奔る。 盾は彼らの肉体を守った。 しかし、“全て”というわけではない。 “辛うじて守った”と言ったほうが表現的には的確だ。 その証拠に、視界が元の256色のフルカラーへと戻った時、再び視界は別の色で染められていたのだから。 その色は赤。 触ると生温かくて、様々な意味でゾッとさせる感触。 視界は赤一色。 それは血という人間の命の糧そのもの。 ヒトという存在、いや生き物全てがこれを肉体の内側に循環させることにより生き長らえているのだ。 血は生き物という存在の命そのものと言っても過言ではないだろう。 その証拠に、生き物は血がなければ生きていられないか弱い存在だ。 故に、自分達の視界が赤一色に染め上げられているという事実は、出来ればしたくはない想像の概念を募らせる。 周囲を見渡す。 そこには仲間が横たわっていた。 しかし、そこに横たわっているのは仲間だけではない。 見覚えのあるモノや、見覚えのないモノなど様々な部品(パーツ)が転がっている。 目を凝らしてよーくその転がっているモノ達に標準を合わせる。 すると、その全容が少しずつ把握できてきた。 さらにその全容を知ろうと目を凝らす。 しかし――――――― シェルビィ「あ、ああ―――――っぁ」 耳に聞こえてくるのは、仲間の苦悶の声。 それだけで理解できた。 今目の前に転がっているモノがなんなのか。 そして、仲間達の周りにも転がっているモノがなんなのかも全て。 ロビーネ「あ――――ああ、―――――うあぁぁぁあぁぁぁぁぁああああっっっっっっ!!!!????」 蓋をしていた感情が一気に溢れ出す。 それは恐怖が一気に頂点にまで達したときのような感覚だった。 いや、実際には恐怖は現在を以って頂点にまで達している。 それもそうだろう。 なにせ―――――彼らの周りに転がっているモノは、 ロビーネ「私の……私の腕がぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁっっっっ」 彼らの肉体に元々生えていた身体の一部に他ならないのだから。 目の前に広がる光景と自身に起こったことに対して錯乱し始める七宝聖天のメンバー達。 並の戦士ならば自身の一部が無くなろうが戦いに支障がなければ騒ぎ立てたりはしない。 だが、彼ら全員はさぞ生易しい戦場に身を置いていたのだろう。 片腕を失くした程度のことで一般人のようなリアクションを取っている。 正直、彼らの驚きようや恐怖の仕方などは見るに堪えない。 仲間の死は見慣れていても、身体の一部を失うという経験は浅いようだ。 まあ、実際のところ仲間の死よりも身体の損傷や損失に関してのことの方が珍しいとも言えるのだが。 凍夜「さて、七宝聖天のメンバーがあの調子では戦いも起きんだろう。今のうちに彼女達の治療を優先するとしよう」 最早見ることさえ興味が削がれた凍夜は仲間達に未だに治療を受けている仲間のところに向かうよう指示を出す。 仲間達は凍夜の指示に異論を問う事はせず、ただ従ってその歩みで仲間の下へと向かう。 凍夜もそれを確認してから身を翻して同じように仲間達の下へと向かうのだった。 〜虚空神殿・中枢核〜 一方、この戦いの元凶たる存在と戦っている刹那は、いつの間にか王座の間とは全く違った場所へと“招き寄せられて”いた。 刹那「くそっ………あの野郎、一体何処に行きやがったっ」 毒づきながら周囲の気配に気を配る。 今のところ感じられる気配はない。 ディシアが自身の気配を殺してしまっているためだ。 少しでも動きがあれば気配は滲み出るのだが、動かない限りそんなことはない。 その結果が刹那を余計苛立たせた。 自分から掛ってこい、などと言ってきたくせに蓋を開けてみれば正面からぶつかり合うような真っ当な戦士ではないらしい。 事実刹那も、真正面からぶつかり合うような戦士ではない。 しかし、ディシアの戦法は刹那のソレとは大きくかけ離れている。 刹那の場合、相手に必ず攻撃を命中させてから相手の間合いより離脱する、所謂必中型のヒットアンドアウェイタイプだ。 だが、ディシアは単に相手に当てるという概念を持たず攻撃してくる。 それは冷やかしのためか、それとも相手の力量(チカラ)を量るためのものか。 どちらにせよ刹那のような戦い方とは天と地ほども差があるという事だ。 刹那「隠れてねえで、正々堂々と戦えっ!」 ディシア「ふっ。意外と苛立っているようだな、柊刹那」 刹那「うるせーっ!こんなチマチマとした戦い方されるのが一番気に喰わねえんだよっ!テメエも戦う者なら、正面からぶつかってくるのが筋ってもんじゃねえのかよっ!?」 ディシア「生憎と、私は戦術家であって戦う者ではない。故に貴様の心に油断を作り、そしてそこを狙い撃つっ!!」 突如物陰より現れる影に肉体が反応する。 しかし、影はその両手に持っている飛び道具を用いて淡い緑色の閃光を彼に撃ち出す。 突然の攻撃に反応が遅れる。 今から障壁を張っても間に合わず、剣で斬り捨てようにも今までの防御でそれが成功した例(ためし)はない。 飛来する閃光。 考える暇も与えられぬまま、緑の閃光は氷雪の華に衝突した。 [Back][Next] [戻る] |