D.C.S.B.〜永劫の絆〜 PageE 炸裂する膨大な魔力。 それはチャちな現代火器など容易く凌駕し、その莫大な量の火薬を一気に拡散させる。 魔力による爆発により、柊邸の屋根は悉く崩壊し、建物はすでに倒壊寸前。 辺り一面にはまるである一部だけを護るかのように“避けられた”傷一つない空間と、一目だけでもその威力を物語れるほどの煤の痕が全体に染み渡っていた。 唖然とする周囲。 その中で、煙に巻かれた“青年”が空より降りてくる。 亜沙「えっと………誰?」 亜沙の気の抜けそうな声が辺りに響く。 しかし、彼女の言葉には他の者も首を縦に振りながら頷いている。 空より降り立った男の姿に、誰も見覚えがいないのだ。 が、その一点に関しては、未だに空に佇んでいるロビーネ以外に言えることなのだが。 ルン「……………らい、が?」 少女から発せられる意外な人物の名。 その言葉に、ほんの一瞬だけだが青年は反応を示した。 そこからドミノ倒しのように驚きの波が連鎖する。 確かに、空にいたはずのライガの姿は消え、今地面に降り立った青年のみがいる。 それを考えれば、あながちルンの言っていることも間違いではないだろう。 しかし、確証と言えるモノがない。 それだけにその青年がライガという保証は何処にもない。 場に緊張が走る。 一部はいつでも迎撃できるように。 一部はいつでも身を護れるように。 誰もが息を呑む瞬間――――――青年が動いた。 その足取りはゆっくりで、それでいて敵意は感じさせない。 その先には一人の少女と一人の女性。 その二人の前で立ち止まると、 ライガ「……………悪いけど、一緒に来てもらう」 青年へと急成長してしまった少年、ライガは冷淡な声でそう告げた。 メリア「ライガ……その、姿は?」 ライガ「説明する必要はない。とにかく、一緒に来てもらう」 ルン「ライガ?」 ライガ「………二度は、言わない」 ルンの再度の呼びかけにも、冷淡な態度と声を崩さずにライガは続ける。 その時である。 まるで二人を守護するかのように一陣の風が割って入ったのは。 ライガ「っ!?」 メリア&ルン『……!?』 突然の疾風。 それはなんの前触れもなく。 そして、それは二人に触れようとした外敵(ライガ)を悉く弾き飛ばす。 ライガ「……なるほど。あくまでオレの邪魔をするというわけかっ」 セイバー「ええ。貴方は私たちの知っているライガではない。そんな貴方に、彼女たちを渡すわけにはいかないっ」 ライガ「では、実力行使とさせてもらおうかっ」 最早視覚出来ないほどの風の結界により視えない剣となっている剣を構え、迎撃に入る。 地を割らんばかりの勢いを以って地面を蹴り、一気にセイバーとの距離を縮め、予め手にしていた剣で両断にかかる。 ぶつかり合う剣と剣。 それは互いの勝敗をかけて。 右から剣を振るえば、その逆から奇襲をかける。 下から突き上げれば、その逆から突き刺しにかかる。 ぶつかり合う度に火花は散り、一進一退の攻防となって両者の実力を探り合う。 互いの顔にはそれぞれ余裕と苦難。 どちらかが弾けば、どちらかが叩き斬りに来る。 どちらも振り下ろす剣に宿すのはそれぞれの想い。 その想いの大きさに比例するかのように、互いの剣の重量は増していく。 振り下ろされる度に地面は抉られ、窪み、そして粉砕される。 だが、これだけの攻防を繰り広げて尚、二人の身体には未だに傷一つない。 それは、ある意味異様な光景だった。 “最優”と称される剣士のサーヴァントであるセイバーとここまでの攻防を繰り広げられる力量を持つ者は、恐らくこの時代には指で数えるほどしか存在し得ないだろう。 だが、目の前で繰り広げられている者は紛う事無き一進一退の攻防。 あのセイバーが手を抜くという点は決して考えられない。 士郎曰く、「セイバーは容赦がない」と言わしめるほどこと戦いに於いて彼女は手を抜かない。 そんな彼女と互角以上の戦いをしているライガは、ほんの少し前に戦いを享受してもらったばかりの力を持った子供。 にもかかわらず、互いに譲らず互いに退かない攻防を繰り広げているあたり、これが戦闘に特化して造り出された人工戦闘生命体の持つ力なのか。 誰がもそう思った直後、 「ぐあっ――――」 ガギン、という一際大きい鉄が弾かれる音とともに聞こえてくる悲鳴。 その声に周りの者達は目の前の状況に我が目を疑った。 ライガ「これが、彼の騎士王の力か……っ。話にならないな」 セイバー「………くっ」 そこに広がっていた光景は、誰もが我が目を疑う光景だった。 本来ならば逆であるはずの互いの構図。 しかし、そこに広がる光景は、見間違うことなどなき真実。 ライガの前に屈服するかのように片膝を付けて忌々しげに彼を見つめているセイバー。 そんな彼女を見下すような眼差しで落胆とも言える態度で佇んでいるライガ。 互角とも言えたこの勝負、実はライガのほうが一枚上手だったのだ。 それを最後までセイバーはおろか周りの者達も読み取れなかった。 あくまで二人の戦いは互角。 そう考えていた。 ライガ「―――――それじゃあ、消えてもらおうか」 レッドクイーンを振り上げる。 最早彼の背丈に見合うほどの姿である彼の剣は正にトドメを刺す剣にしても申し分なく。 アクセルを引くことで唸りを上げるイクシードシステム。 それは、最後の一撃を叩きこむための充填。 その出力は臨界を超え、今か今かと解放の時をただひたすら待つ。 そして、 ライガ「さらばだ、騎士王――――」 その剣は無慈悲にも振り下ろされた。 [Back][Next] [戻る] |