D.C.S.B.〜永劫の絆〜
Page36
ライガ「……ぐっ。大丈夫、ルン!?」
翼の双刃を受け止めながら、目だけをルンに向ける。
ルン「……っうん!」
あまりの出来事に反応が一瞬だけ遅れたが、ルンは力強く頷いた。
その頷きを見てライガは微笑む。
―――――なんとか間に合った。
咄嗟の判断だったが、とりあえず難関は回避できた。
そう思い、ライガの腕に力が篭もる。
ライガ「うぉぉぉぉぉぉおっ!!!!」
雄叫びを上げながら、ライガは翼を勢いよく吹き飛ばす。
翼「きゃああああああっ!!!?」
吹き飛ばされた翼は、勢いを殺せないまま後方に吹き飛ぶ。
刃「翼姉ちゃんっ!?くそっ!」
斬魄刀を構え、地が割れんばかりの勢いを以ってライガに突進する。
刃「酌み交わせ……、『龍王』」
鼓動する刀。
それは主が定めた敵を討つため。
身の丈以上の大太刀だったそれは、龍の爪を模した鍔を持った大きな大剣へと姿を変える。
ライガ「くっ!?」
振り下ろされる流圧。
それは全てを圧砕するが如くの勢いでライガに牙を剥く。
重く圧し掛かる流圧に呑まれて、ライガは為す術なく地に落とされた。
――――――――――
なのは「ライガくん、シグナルロスト…………撃墜、だね…」
モニターに映し出される、ライガの撃墜を認めたランプ。
それを見て、なのはの表情が暗く重いものになる。
刹那「まっ。たったの一週間であれだけの動きが出来れば上出来だ。だから、そんな落ち込むなよ、なのは」
自身が鍛えた人材がこれほど容易く落とされたことにショックを受けているのか、なのはは暗い表情のまま頷く。
はやて「まあ、訓練始めてまだ一週間。それでいきなり勝て!なんて言われても、本人達にはちょっと無理があったと、私は思うけど……仕方ないやんか。どう足掻いても、経験の差は埋められんのやから」
フェイト「はやての言うとおりだよ、なのは。実戦経験なんて、この間の戦いだけだった三人が、いきなり経験豊富な人に勝て、なんて言うのはちょっと無理があるよ。だから、これからを頑張っていこ?ねっ?」
なのは「フェイトちゃん、はやてちゃん……。うん、そうだね。これからはどんどんビシビシ鍛えていかなくちゃっ!」
はやてとフェイトの二人に励まされ、そして慰められたなのはの瞳には、俄然やる気充分といった意思が宿っていた。
刹那「さて……残るは鬼藤家の養子姉妹。あいつらが一体どれだけできるかが、重要になっていくな…………」
モニター越しに、残っている二人を見て、事実2対2の状況になった戦況を眺めながら、刹那はそう呟いた。
―――――――――
刃「だ、大丈夫、ライガ?」
慌てて先程自分が撃墜した人物の身を案じて歩み寄る。
ライガ「いててててっ…………驚いたなぁ。まさか、ここまで強いだなんて……」
刃「ははっ。僕って小さい頃から零番隊っていう部隊にいたから。それなりに鍛えられてるんだよ……」
とりあえず年齢に関することは省きながら、自身の経歴というものをライガに教える。
ただでさえ、彼はその零番隊に於ける三番目の実力を有した天才児――――と、これは陰で言われていることなのだが。
刃は、本来天才児などと言われるような才能は持っていない。
これは彼の必死の努力が実を結んだ証拠だ。
つまり、彼は自分にはないものを努力で補ってきた、所謂影の頑張り屋だ。
それだけに、周りからはそんな風には見えないといつも言われて、たまに不機嫌になるときもある。
ライガ「よっと。多分、俺はさっきので撃墜されたと思うから、休憩させてもらうよ。あ、これは忠告じゃなくて警告。あの二人をあまり甘く見ないほうがいいと思うよ。多分……………後悔するから……」
最後のほうはちょっと肩が震えているようにも見えたが、そんなことは気にも留めず、ただ「わかった」とだけ返した。
だが、この安易な思考がこのあと災いする。
そう。二人の戦女神によって。
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