[携帯モード] [URL送信]

D.C.S.B.〜永劫の絆〜
Page34
刹那の声とともに響き渡る、戦いを開始するブザー。


その音に反応して最初に動き出したのは、ほかならぬライガ達だった。



“敵と戦うとき、一番重要なのは最初の出方だ”



そう、頭の中に響き渡る声。

これは最初の訓練で凍夜が口にした戦いに於ける基本だった。

最初の出方次第で、戦況はどちらのほうに転ぶかが決まってくる。


無論。最初は優勢でも、後に劣勢になり得る可能性も秘めているということを、彼は付け加えているが。


ライガ「ルン!藍!」

ライガから二人に指示が飛ぶ。

先の訓練で練っていた策の一つでも試そうとでも言うのか、二人はライガに声に従い、各々の位置に即座に移動する。


さて、先程先制を取られてしまった刃と翼の二人だが、存外驚くこともなく、ただその光景を眺めているだけだった。

それはまさに、相手の手の内を把握しておく必要がある、と態度で示しているかのようだ。

もちろん、二人ともただ黙って攻撃を受けてやるほど人が好いというわけではない。

だが、彼らには知識が足りなかった。

別に戦いに於ける知識ではない。

彼らが欠落している知識は、ライガ達の持ち得る得物(ぶき)、つまりはデバイスについてである。


そもそも、死神にとって相手の能力を把握せずに戦う、ということはまずない。

彼らは戦いの中で敵の力量、そして有する能力を把握し、事に当たる者達だ。


そんな彼らの、更なる高みにいる二人がそれを考えずにただ黙っているわけはない。

要するに、これは戦う前の様子見。

観察、といったほうがいいのだろうか。

どちらにせよ、彼らはライガ達の力量などをまず把握する必要がある。



藍「鬼藤藍、いっきまーすっ!!」

高らかに声を上げ、デバイス・ヴァルキュリアを構える。

声の高さと響き具合を考えて、彼女が今いる場所は恐らく空中。

それも、崖達よりも少し高い位置に立っている。


構えられているヴァルキュリアは、すでに砲撃モードであるブレイカーモード。


藍「……メテオ――――、」

ヴァルキュリアの砲撃口に集束される魔力。

そして、それを抑制するための魔法陣が二、三個輪を創り集束されし光の球を包み込んでいる。

藍「―――バスターァァァァァ!!!!!!!」

彼女の声とともに放たれる藍色の閃光。

それは一直線に眼下に立っていた刃と翼の二人に襲いかかる。


だが―――――、


刃「――――縛道の八十一、『断空』」


静かに響く刃の声。

その声とともに出現する霊力によって創られた一つの盾。

それは主に降りかかる災厄を悉く防ぎ、果てにはその全てを防ぎ切った。


藍「……嘘っ!?」

藍が驚愕の声を上げる。

だが、それも無理もない。

なにせ、彼女の中では『スターダストブレイカー』の次に最強を誇るであろう砲撃が、いとも容易く防がれ、その挙句その砲撃を防いだ盾には傷一つ付いてないのだから。

彼女の驚愕は相当なものだろう。


ルン「なら、これならどうだ…!」

アルレイド≪Sonic move≫

アルレイドの機械気質な声とともにルンの身体に魔力が付加され、文字通り雷の如く疾走する。

速度で言えば、ライガと同等いやそれ以上の速度を以って翼に向かい突進をかける。


翼「………飛翔せよ、『朱紅(くれない)』」

突進を駆けてくるルンを迎撃する形で、翼が斬魄刀の名を告げる。

瞬間、炎が彼女を包み込み、ルンの進行を阻む。


咄嗟のことで驚きはしたが、ルンも伊達に濃い訓練を受けてきてはいない。

瞬時に障壁を展開し、敵の攻撃に備える。

だが―――――、


翼「………ごめんね、ルンちゃん」

ルン「え?」


声のする方に振り返る。

―――だがそれだけ。


振り返ったときには、すでに時遅し。

防御もする暇も与えないと言わんばかりの神速が、彼女を捉えた。

[Back][Next]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!