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D.C.S.B.〜永劫の絆〜
Page30
〜柊邸・寝室(刹那)〜



刹那「…………………」


寝室で寝そべっていた刹那は、あることだけを考えていた。

それは、凍夜の口から発せられた言葉。


―― 俺達の、家族の敵について…な ――


刹那「……っ」

ギリリ、と音が聞こえるくらい奥歯を強く噛み締める。


忘れてはならない出来事。

だが、忘れ去りたい出来事。


行き場のない感情だけが、刹那に重く圧し掛かる。

だが、それも仕方ないことなのかもしれない。

あの日、あのときの自分達は、力がなかった。


護りたくて剣を取ったはずなのに、結局は護られた。

なんて愚行で愚直。愚かしいほどまでの体たらく。


刹那「………姉さん。俺は、これからどうすればいいのかな?」


ボソッと、誰に問うのでもなく口にする。

別に口に出さなくても良かったかもしれないが、このときだけは、口に出さずにはいられなかったのかもしれない。


刹那「…俺は、アイツの……ガーディアンのようになっちまうのかな…?」


―――――ガーディアン。

先の戦いに於いて、特異な出来事によって発生した聖杯戦争における、『守護者』のサーヴァント。

己の確固とされた未来の理想(カタチ)。

そしてそのなれの果て。


このまま行けば、自分は奴のようになるのだろうかと、心なしに思ってしまう。

否、ならないという保証はどこにもない。

自分が奴のようにはなるまいとして、あの戦いで自分は奴を打倒し、そして己の理想を貫き通した。


その想いは、今も変わらずここにある。

だが、それでもだ。


凍夜の話の中に出てきた家族の仇。

それを聞いただけで折れそうになる自分が、恥ずかしながらいる。


それは耐えようのない苦痛でもあり、逆に耐えることはないただの逃げでもある。

だから自分は迷っているのだと思う。


この先に起こるであろう戦いで、自分がどの道を取るのかによって未来が決する。

英霊ヒイラギが通った悲しく、それでいて報われることのない後悔の道。

されど、最後にはその理想を貫くことが出来るに値する道。

どれを取っても自分は奴のようにはなりたくなどない。


なにが嬉しくて、自分は奴のようにならなければならないのだろうか。

確かに奴は強かった。自分でも驚くほど強かった。

恐らく奴が固有結界を有していれば、己れの本当の本質を見抜くことが出来ていれば、勝機は奴に傾いていた。


自分が勝てたのも、恐らくただの偶然。

奇跡と呼べることでもある。

もう一度奴に会えるのであれば、今の自分は奴にとって想定された事態というわけだ。


そう思っただけでも自然と嘲笑が漏れてしまう。

何がしたくて、自分は力を手にしたのか。

何が正しくて、自分は未来たる自分をも退かせたのか。

これでは、恐らくみんなに笑われるのがオチだ。


刹那「ったく………。これだから、俺はいつまで経っても凍夜と明確なケリがつかないのか……」


身体に喝を入れる。

勢いよく立ちあがり、そして決意を固める。


何がしたくて、力を欲し、そして手にしたのか。

―― そんなものは決まってる ――


何がしたくて、自分の未来たる自分をも、退かせたのか。

―― 約束を、護るためだろ? ――


誓った言葉は一体、何のためだったか。

―― それは、誰かに笑顔でいてもらいたかったからだ ――


ならば、やるべきことはなんであるか。

―― ただ護り続ける。これからも、どんなことがあろうと、俺は理想(オレ)を張り続ける ――



刹那「…っよし。リビングに行って、飯でも作ってもらおっ。そんでそのあとは子供達に訓練の手ほどきだな」


意を固め、志を宿し、刹那は部屋を後にした。

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あきゅろす。
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