D.C.S.B.〜永劫の絆〜
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〜柊邸・寝室(刹那)〜
刹那「…………………」
寝室で寝そべっていた刹那は、あることだけを考えていた。
それは、凍夜の口から発せられた言葉。
―― 俺達の、家族の敵について…な ――
刹那「……っ」
ギリリ、と音が聞こえるくらい奥歯を強く噛み締める。
忘れてはならない出来事。
だが、忘れ去りたい出来事。
行き場のない感情だけが、刹那に重く圧し掛かる。
だが、それも仕方ないことなのかもしれない。
あの日、あのときの自分達は、力がなかった。
護りたくて剣を取ったはずなのに、結局は護られた。
なんて愚行で愚直。愚かしいほどまでの体たらく。
刹那「………姉さん。俺は、これからどうすればいいのかな?」
ボソッと、誰に問うのでもなく口にする。
別に口に出さなくても良かったかもしれないが、このときだけは、口に出さずにはいられなかったのかもしれない。
刹那「…俺は、アイツの……ガーディアンのようになっちまうのかな…?」
―――――ガーディアン。
先の戦いに於いて、特異な出来事によって発生した聖杯戦争における、『守護者』のサーヴァント。
己の確固とされた未来の理想(カタチ)。
そしてそのなれの果て。
このまま行けば、自分は奴のようになるのだろうかと、心なしに思ってしまう。
否、ならないという保証はどこにもない。
自分が奴のようにはなるまいとして、あの戦いで自分は奴を打倒し、そして己の理想を貫き通した。
その想いは、今も変わらずここにある。
だが、それでもだ。
凍夜の話の中に出てきた家族の仇。
それを聞いただけで折れそうになる自分が、恥ずかしながらいる。
それは耐えようのない苦痛でもあり、逆に耐えることはないただの逃げでもある。
だから自分は迷っているのだと思う。
この先に起こるであろう戦いで、自分がどの道を取るのかによって未来が決する。
英霊ヒイラギが通った悲しく、それでいて報われることのない後悔の道。
されど、最後にはその理想を貫くことが出来るに値する道。
どれを取っても自分は奴のようにはなりたくなどない。
なにが嬉しくて、自分は奴のようにならなければならないのだろうか。
確かに奴は強かった。自分でも驚くほど強かった。
恐らく奴が固有結界を有していれば、己れの本当の本質を見抜くことが出来ていれば、勝機は奴に傾いていた。
自分が勝てたのも、恐らくただの偶然。
奇跡と呼べることでもある。
もう一度奴に会えるのであれば、今の自分は奴にとって想定された事態というわけだ。
そう思っただけでも自然と嘲笑が漏れてしまう。
何がしたくて、自分は力を手にしたのか。
何が正しくて、自分は未来たる自分をも退かせたのか。
これでは、恐らくみんなに笑われるのがオチだ。
刹那「ったく………。これだから、俺はいつまで経っても凍夜と明確なケリがつかないのか……」
身体に喝を入れる。
勢いよく立ちあがり、そして決意を固める。
何がしたくて、力を欲し、そして手にしたのか。
―― そんなものは決まってる ――
何がしたくて、自分の未来たる自分をも、退かせたのか。
―― 約束を、護るためだろ? ――
誓った言葉は一体、何のためだったか。
―― それは、誰かに笑顔でいてもらいたかったからだ ――
ならば、やるべきことはなんであるか。
―― ただ護り続ける。これからも、どんなことがあろうと、俺は理想(オレ)を張り続ける ――
刹那「…っよし。リビングに行って、飯でも作ってもらおっ。そんでそのあとは子供達に訓練の手ほどきだな」
意を固め、志を宿し、刹那は部屋を後にした。
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