D.C.S.B.〜永劫の絆〜
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―side to 刹那―
風が僕の頬を掠めていく。
そう。僕は今風と同等、いやそれ以上のスピードでお姉ちゃんに“引っ張られている”。
刹那(子)「お、お姉ちゃん……!流石に飛ばしすぎ………っ!?」
静香「なに言ってるのよ!今は急がなくちゃどうにもならないでしょ!?いいから、あんたは黙って私について来なさい!」
いや、あのお姉様?僕はついて行けてないのですけど?そもそもお姉ちゃんが僕を引っ張っているのでは?
静香「男の子ならごちゃごちゃ言わないっ!いいから、黙ってなさい!」
刹那(子)「ご、ごめんなさい………」
怒られてしまった………。
なんとなく理不尽な気もしなくはないけど、怒られてしまった。
うん。ここは黙っておこう。触らぬ神に崇りなしってよく言う……………………言うのか?
いや、なんかおかしいな。
けど間違っているとも言いきれないのですけど、この際どうしたらいいんだろうか。
うん。止そう。考えるのは。
考えるだけかったるくなってきた。
静香「ん?どうしたの刹那?」
刹那(子)「ううん。気にしないで。ただふと悟っただけだから………」
不思議そうな顔で僕の様子を窺うお姉ちゃんに対し、ちょっと本音を混ぜた言葉を返す。
そんな僕の言葉に、お姉ちゃんはまた首を小さく傾げていたけど、それもすぐになくなった。
多分、僕と同じ考えに至ったんだろうな。
そう――“考えるだけかったるい”って。
―side to out―
――――――――
―side to 静香―
とりあえず刹那はなにかを悟ったみたいだ。
そのなにかまでは判らないけど、とりあえず間違った悟りではないことは確かだと思う。
うん。絶対そうだ。
変なことだったら、お姉ちゃんであるこの私に見破れないわけがないっ!
フフフっ♪姉の特権というモノはこういうときにこそ役に立つのよねぇ♪
静香「……!いた……」
などと考えていると、目標である母君の姿を見つけた。
――――けど様子がおかしい。
戦っているのはお母様と魔物が数体。
その中に、お父様の姿がない?
これは絶対におかしいわね………。どうなってるの?
静香「まっ。考えただけでわかるわけじゃないし、私が直接確かめればいいだけの話よ…ねっ!」
刹那(子)「へ?おねぇ………ちゃっ!?う、うあああああああっ!!!!!?」
最後の言葉を皮切りに、私は一気に加速する。
後ろの方でなにか泣き叫んでいるようだけど、この際は無視だ無視。
身体の中の回路(エンジン)に魔力(灯油)を大量に注ぎ込む。
新たに注ぎ込まれた回路(エンジン)はその回転数を上げ、さらなる肉体強化を私の身体に施す。
だけど、さすがにこれ以上の「強化」の魔術は危険か。
身体が見えないところから悲鳴を上げていることが解る。
魔力と言う灯油をエンジンである回路に通す度に「強化」の魔術を施しているのだ。そろそろ限界が来てもおかしくはなかったけど、まさかここまでボロボロになる寸前で来るなんて。
少しだけ自身の未熟さに腹が立った。
一般の、それも一人前の魔術師ならば三度、四度の「強化」ではそう易々と悲鳴なんて上げないと、お婆様が言っていたような気がする。
それを考えると、私はやっぱり一人前には程遠いことを思い知らせれる。
それがどうしようも歯痒く、どうしようもなく不甲斐なかった。
だけど、ここで愚痴っていても仕方がない。
私は一気に回転数を上げると、先程以上の足力を以って加速した。
―side to out―
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