D.C.S.B.〜永劫の絆〜
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―side to 刹那(子)―
刹那(子)「お姉ちゃんっ!?」
――――鮮血が舞う。
それはどうしようもなく鮮やかに。
それはどうしようもなく美しく。
僕の目の前で、お姉ちゃんが空から降ってきた“何か”によって潰された。
刹那(子)「………あ、あぁ………あぁあ…………」
口から漏れてくるモノは、定まらない言葉だけ。
いや、これが言葉というモノに該当するかは別だ。
多分、自分の口から漏れているモノは言葉ではなくただの吐息。
そう、吐息だ。これは言葉なんかじゃない。
こんなモノが、言葉であるはずがない。
目の前がグニャリと歪み始める。
別に殴られたわけじゃない。意識が飛ぶのとは違うようだ。
じゃあ、今この視界を歪ませているモノは…………一体なに?
「ふむ。案外呆気ないものだな。もう少し楽しませてもらえるのかと期待していたのだが…………所詮は小娘だったか。これならば、まだ捕まえて奴隷として我らの性への欲求を解消してもらっていたほうが賢明というもの。いやはや、損なことをした」
後ろの方で声が聞こえる。
だが、それもよく聞き取れない。
こいつは一体なにを言っているのだろうか?
そもそも、こいつは自分達と同じ人間(ヒト)なのだろうか?
思考が定まらない。
ただ、その定まっていない思考でも一つだけ理解できたことがある。
自分の身体の内に渦巻いている感情。
“怒り”が、今の自分を満たしているということだけが、解っている現状。
ああ、いいさ。それだけで充分だ。
それだけ解っていれば、あとは定まっていない思考なんて必要ない。
――――――だって、今の“オレ”には思考“なんてモノ”必要ナイノダカラ。
「さて、小僧。貴様も亡き姉の下へと誘(いざな)ってや…………っ!?」
湧き起こる“何か”。
後ろの反応を見る限り、相手はなにが起こっているのか理解できていない。
――――ダガ、ソレデイイ。
お前を………
キサマを―――
――――――ブチ殺スノダカラナッ!!
刹那(子)「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
吠えた。この世の全てが壊れるくらい吠えた。
ソウダ―――吼エロ。
地が割れんばかりに揺れている。けどそれでいいのかもしれない。
俺ハ――――――奴ヲ殺スノダカラナ。
身体の内側から発せられているこの力は、一体何なのだろうか?
知ラナクテイイ―――――知ッタトコロデナンノ意味モナイ。
そうだ。今の俺には真っ先にやらなくちゃならないことがある。
ソウダ、ソレデイイ。
高ぶってくる感情に流されるまま、俺は力を解放していく。
サア、殺ソウ。憎クテ憎クテ仕方ガナイ敵ヲ。
―――――――サア!!!!
“ドックン――――!”
心臓が飛び跳ねるような感覚の後、俺はなにも考えず、ただ感情に任せて突進した。
――――――――
―――――
――
刹那(子)「……………ぅん……………あれ?」
気が付くと、僕は横になって倒れていた。
どうして、横になんかなっているんだろうか?
刹那(子)「――――そうだ!あのとき、僕はっ!」
思い出し、勢いよく飛び起きる。
周りを見渡しても、暗闇だったためにほとんど何も見えない。
刹那(子)「…………一体、何があったってんだよ……」
今の状態ではなにも知ることが出来ない。
けど、あの時“何か”が起こったのは事実だ。
そうでなければ、追ってきた人物の攻撃によって“潰されたはずの”お姉ちゃんが、僕の“となりにいるわけがない”のだから。
刹那(子)「お姉ちゃん!しっかりして、お姉ちゃんってばっ!」
まるで地震でも来たかのように、お姉ちゃんの身体を大きく揺する。
静香「ん……っ。……かはっ!」
吐血したのか。お姉ちゃんが咳き込むと、地面になにかが付着する音がした。
その正体は見なくてもわかる。
それだけに、今はお姉ちゃんを安全な場所に連れて行って、治療しなくちゃならない。
刹那(子)「…………お姉ちゃん、起きてってばっ!!」
今は一分一秒でもこの場所から逃げ去りたい一心で、傷ついているはずのお姉ちゃんの身体を、手荒く揺する。
静香「………んぅっ!いつっ…………あ、あれ?」
刹那(子)「お姉ちゃん!」
必死の呼び掛けが届いたのか、お姉ちゃんはぼんやりとした表情で僕の顔を見つめてくる。
良かった。目を覚ました。
目を覚ましたことにほっと胸を撫で下ろす。
正直な話、死んでしまったのではと思われるほどの衝撃があったからだ。
それだけに、お姉ちゃんが生きていることは嬉しくて堪らない。
刹那(子)「説明は後にして、今はこの場所を一刻も早く逃げよう!」
静香「そう、ね。いつ………っ。傷にも多少は問題はあるけど、動けないほどじゃないみたい。よしっ!逃げるよ、刹那っ!」
ふらふらとした足取りで立ち上がったお姉ちゃんは、額に大粒の汗をたくさん滲ませながらも、にっこりと微笑みながら、また僕の手を引いてその場を歩き出した。
―――――――――きっと、痩せ我慢していることは、子供心に気が付けた。
いや、多分子供心じゃなくて、きっと本能的にそう察したんだと思う。
だけど、自分のために無理しているお姉ちゃんの姿を見ていると、なんだか遣る瀬無い、申し訳ない気持ちになる。
けど、その気持ちを出すことなく、僕はお姉ちゃんの手に引かれながら、ポツリと呟くしかなかった。
――――――――――ごめんなさい、と。
―side to out―
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