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D.C.S.B.〜永劫の絆〜
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―side to 静香―



静香「―――――――Anfang(セット)」


起動の呪文を口にする。

それは、私を人間から魔術師へと変換する為の呪文。


言の葉の発動とともに身体の神経という神経は、魔力を通すための疑似神経である魔術回路へと変換される。


――――体が熱い。まるで火で焼かれた鉄の棒を皮膚の内側から押し付けている感覚だ。

それはもう、皮膚が内から焼け融けるかのように熱い。


幾度となく、魔術の鍛錬で感覚は掴んでいるものの、やはりこの感覚だけは未だに『慣れる』ということはない。

だが、初めて発現した時よりは随分とマシになったと、今では思う。


これも、日々の鍛錬の賜物というものだろう。

この時だけは、我が愚母に感謝こそすれ、憎しみが増すだけなのだが。


ホンットに、勘弁願いたいものだ。

自身の子を口約束の道具にするあたり、お母様もよっぽどお父様に入れ込んでいたのだろう。

これを初めて聞かされたときは、本気で魔術を使って呪い殺してやろうかとも思ったけど、あの人は私以上の才能を持った、曲がりなりにも魔術師だ。

恐らく、私なんかは足元にも及ばないと思う。

それが、未だに私が正式に家の当主を受け継いでいない証拠だったりするのだけれど…………


静香「って…、呑気に語ってる場合じゃなかったわね」


気を引き締めて魔術を発動するために、回路に魔力を流し込む。

敵の数はざっと見ただけで少なくとも5人。


こればっかりは大掛かりな魔術でも発動しなければ迎撃は出来ないだろうなぁ。

………はぁ。仕方ないか…。


ため息を零しながらも、私は術の発動条件を満たしていく。


静香「Ich behalte es Verändere(保存、変換)――――、Schießen Sie es, Und das Befehlen(我が命によって撃ち抜け……!)―――!」


右手を突き出す。

その瞬間、私の掌に集まって行く魔力。

そして次の瞬間には、巨大な魔力の砲撃として、ソレは後方の敵に放たれた。



“ゴォォォォォォォォォオ!!!!!”



後ろから聞こえてくる、とてつもないほどの爆発と炸裂音。


やった――!

二小節ほどの詠唱で作った即席魔術でも、私にかかればこんなモノよっ!

思い知ったか!アーッハッハッハッハ!!


刹那(子)「………お、お姉ちゃん?」


心の中で高笑いしている私に、ギョッとした表情で刹那が語りかけてくる。

あら?もしかして、顔に出てたってやつかしら?


そうだとまずいわね………。刹那にはあんまり私の“黒い部分”は見せてなかったから、ちょっと気不味いなぁ…………。


静香「ん?なぁに、刹那?」


とりあえず平静を装わなければならない。

そう思って、先程とは打って変わりにっこりと爽やかスマイルで我が弟に返した。


こんなときの私って、なにかと順応性が高すぎる。

自分で言うのもなんだけど、これって、いいことなのだろうか?


刹那(子)「…………い、いや…なんでもないよ。……あ、あははは」


かく言う刹那は気のせいだと勘違いしているらしく、とりあえず苦笑いを浮かべている。

あぁんもうっ!敵がいなきゃ即座に抱きしめて、ベッドに直行のお持ち帰りが出来たのにぃ〜!!


こうなったら、敵の戦力なんて関係ないわ!

とことん痛めつけてとっとと追い返そうっと。

そして、そしてそれが終わったらぁ〜……………


静香「…………ふふ♪」

刹那(子)「(やっぱり気のせいじゃないような気がしてきたぞ………。うん知らんふりして、危なくなったら逃げよう……………そうしよう!)」


さて、これからどうしたものだろうか。

そう考えていたときだった。


「悪いな娘。今宵は我らの糧となってもらうぞ……」

静香「……え?」


よからぬことを考え過ぎていたのが祟ったのか、私は、近くに敵がいることに気が付けなかった。

そして―――――――――


“ゴシャッ!!!!”


鈍い音とともに、私の身体は、“何か”の手によって“踏み潰された”。



―side to out―

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