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D.C.S.B.〜永劫の絆〜
PageI
〜柊邸・リビング〜



刹那「ふんふふん、ふふんふっふ〜ん♪」

リビングに立ち込める仄かな香りと陽気な鼻唄。

その発端である刹那は、上機嫌に鼻唄を歌いながら次々と朝の支度を済ませていく。


テーブルに並ぶ料理はハムとベーコン、それにスクランブルエッグ、卵焼き、目玉焼き、サラダ、そしてお馴染みのトーストだ。

ハムやベーコン、そしてトーストに至っては程よいほどに両面が焼かれており、感触も一般のトースターで焼いたものとは一味も二味も違うような気がする。


刹那「久しぶりにこういった朝食の用意するけど、腕は全然鈍ってないみたいだな」

軽く余ったトーストやハムなどを味見感覚で口に放り込んでいく。

その触感や味などを確認して、ほっと胸を撫で下ろす。


ここ最近、朝食やそのほかの食事の用意はメリアや瑠璃などの料理の出来る女性陣に任せっきりだったために、自分で料理するのはあの日以来であろう。

それだけに、簡易ながらも味に落ち度がないことを確認出来て少しばかりほっとする。


刹那「さてと、あとはみんなを起こしてくるだけだな。それにしても、凍夜は何処行ったんだ?寝てるにしても寝過ぎだし、居るにしても勉強部屋から物音がしない。ま、そこはあとで確認すればいいか」

勝手に議論を持ちかけ、勝手に解決した刹那は、ほかのメンバーを起こすべく、リビングを出ようとしたときだった。


メリア「あ……。もう、済んじゃってましたか…」

丁度呼びに行こうと思っていた人物とばったり会う。

心なしか、メリアの表情は少しばかり暗い。


刹那「ああ。悪いとは思ったんだけど、やっぱりたまには休んでもらいたかったからさ…………その、ごめんな」

メリア「いえ。その心遣いだけでも充分ですよ♪ありがとうございます、刹那様♪」

にっこりと、彼女しか出せないような笑顔で、メリアは言う。

信頼の証として。そして、心の底から湧きおこった感謝の気持ちとして。


刹那「それじゃ、ほかのみんなを起こしに行くかっ♪」

にかっと微笑みかけると、メリアはなんの躊躇もなく頷き、二人揃って未だに熟睡している者達を起こしに向かった。






〜神魔王家〜





魔王「正直、キミ達の今回の働きには感謝してるよ、凍夜くん」

ニコッと、感謝の気持ちを込めた微笑みを、柊邸にいなかった人物、凍夜に向ける。

凍夜「礼は別にいい。礼が欲しくてあんなことを引き受けたわけじゃないからな」

そんな魔王スマイルなど完全に無視して、凍夜は先程出された紅茶を口にする。

魔王「そうかい?ならいいんだけどね。で?君がこんな朝早く、とは言っても平均的な朝の時間帯に、私に用とは?」

先程のお茶らけていた雰囲気から一変、魔王の表情は真面目なものとなる。

凍夜「そんなものは、言わなくても解ることだろう?このような申し出は、今に始まったことじゃないのだからな」

魔王「そうだったね………………キミ達のご両親を“殺害した”組織の捜索。それが君からの依頼だったね……」

少し気不味そうな面持ちで、つい下を向いてしまう魔王。

そんな魔王の気持ちなど気にも留めず、凍夜は黙って紅茶を口にする。

凍夜「で?どうなんだ?そいつらは見つかったのか?」

魔王「……えっと、それがね………」


魔法が言いにくそうに言葉を探していたときだった、


「いんや。そいつらの足取りは依然として掴めてねぇ」

魔王「神ちゃん……」

突然現れて、ことの真実を口にする神王。

彼の口ぶりから、彼らなりに“精一杯”探しているのだろう。

だが、結果は白。つまりは見つかっていない。


凍夜「そうか。それは残念だ……」

さも気にしていない様子で、最後に残っていた紅茶を一気に飲み干す。

しかし、飲み干した彼の眼には、明らかな“怒り”と“殺意”が宿っていた。


もうかれこれ依頼してから6年余り。

それでも、成果と言える成果は微塵も出てはいないのだ。

あまりの出来事に、怒りなどが滲み出るのは道理。


凍夜「…………ん?そういえば、俺が保護したルンが元々収容されていた研究所、あそこについてはなにか判ってないのか?」

ふと気になっていたことが、脳裏を過ぎる。

ルンが元々収容されていた研究所。

あそこはなにが理由で破棄されたのだろうか。

それが気になっていた凍夜は、一応魔王や神王にその辺を調べてもらっていたのだが、

神王「ああ?あそこは別にこれといって調べることなんざねぇはずだが?」

神王から帰ってきた言葉は、どこか引っかかる言葉だった。

凍夜「なに?“調べることがない”?」

復唱して改めて感じる疑問。

先程、神王は“調べる必要がない”と口にしていた。

だが、あの研究所の破壊命令が出た時点で、それはおかしい。

普通は予め調査部や諜報部員などが手分けしてその研究所の研究内容、そして研究記録などを調べ上げてから決定を下す。

だが、彼の口ぶりからすれば、違法研究以外の痕跡というものは得られていない。

破壊される理由は、違法研究の時点ですでに決定されたも同然なのだが、やはり何かが引っかかる。


凍夜「その研究所は、何故異界の技術を知っていたんだ?」


飛び出してくる疑問。


――――――違法研究。

それは、予め法で定められた研究法とはまた別の、法では定められておらず、身勝手に取り行っている研究、または法で取り上げられている禁則事項を行っている研究のことを指す。


話を聞く限りでは、魔王や神王達も研究所で行われていた研究についてはその名称しか知らず、詳しいことは全く知らなかったという。

新たな調べで分かったことは、その研究名称とその内容。


ここで少しの疑問が浮かび上がる。


ルン、彼女はかつてのミッドチルダで有名な大魔導師と呼ばれた魔導師、“プレシア・テスタロッサ”が己が娘を生き返らせるために編み出した違法、『プロジェクトF』によって生み出された残滓の一人。

元となった少女の素体はすでになく、彼女の遺伝子を何処からか拝借し、そしてその技術を悪用して生み出された。


それがルンである。


だが、彼らはそんな数年前に生み出された技術を一体何処で知り、どうやって持ち込んだというのだろうか?

そもそも、この人界ではそのような他世界へと続く門(ゲート)など十年前に開かれた『開門』に用いられた扉のみであり、そう易々と転移していけるほど、多重世界は容易くはない。


それだけに管理局の技術やミッドチルダでの魔法のレベルは魔界、神界のどちらの魔法よりも優れていると思われる。

まあ、あくまでそういったレベルでの魔法の技術なのだが。


さて、ここで話を本題に戻そう。


彼の研究所の局員達はどのような経緯でその技術を手に入れ、人知れず魔界に持ち込むことが出来のだろうか。


いくら考えても疑問は募るばかり。


神王「うーん。俺達も詳しいことなんざ知らされてねぇからなぁ」

魔王「あとで我々もそのことについては当たってみるよ。あ、ちゃんと“そっち”の要件も果たすつもりだよ?安心してねっ♪」

凍夜「悪いが、頼んだ。俺はここで御暇する。あまり家を開けると家族が煩いのでな」

魔王「はっは〜♪お父さんは大変だね、凍夜くん♪」

神王「まあ、なにかほかに悩みや相談事があったなら、俺達のところに来てくれやっ!なんてったって、凍夜殿は俺達と一緒で家族を大事にする父親なんだからよォっ!!」

神王&魔王『なーッはッはッはッはッは!!!!!』


凍夜「……………それじゃあな」


高笑いする二人を尻目に、凍夜は稟やラバーズの皆様に軽く挨拶して、神魔王家を後にした。

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