D.C.S.B.〜永劫の絆〜
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さて、そんな平穏な一日を過ごしている最中、世界の裏側では不穏な動きが蠢いていた。
〜某所〜
“その世界”は、全てが闇によって創られ、象られていた。
見渡す限り、闇、闇、闇。
すでに漆黒と呼べる風景の世界に、ぽつんと明かりを灯した城らしき物体が浮かび上がっている。
その城内は、なにかの祭り事をしているように騒がしい。
聞こえてくる声は、不気味な産声や下品で品のない笑い声。
まるで、なにか嬉しいことでもあったかのような、そんな騒々しさが感じられる。
「さて、今宵のパーティは最高の日となりそうだよ……」
グラスに注がれたワインをうっとりとした表情で見つめながら一人呟く色男。
誰に聞かせるわけでもなく、ただ一人、ポツリと独り言のように。
色男の外見は腰に届きそうな金髪に、碧眼を宿した瞳――――そして何処かの貴族のような服装と言えば端的だ。
顔は整っており、どちらかと言えば美形。それでいてなお長い耳。
外見だけ見れば魔族にも見て取れるようだが、この男はどうやら違うらしい。
そう。魔族とはまた違った雰囲気が滲み出ているためだ。
ならば、この男の種族は一体何になる?
疑問は募るばかりだが、残念ながら彼の素性を知ることは、我々には叶わない。
「おや?貴女が此処にいるとは珍しいですね?“ネメシス”さん」
ネメシス「………………………………………別に……」
ふと、自分の近くと通りがかった女性――名前はネメシスという――に話しかける。
話かけられた女性、ネメシスは興味なさげに男の方には顔は向けない。
「相変わらずつれないですねぇ………貴女は。ん?貴女が此処にいるということは、“彼”もこちらに?」
やれやれと肩を竦めながら話を中断しようとせず、ふと気になったことを口にする。
ネメシス「………………貴方には…………関係……ない」
男の質問に、文字通り素っ気なく答えると、ネメシスは早々にその場から立ち去った。
「ふぅ。彼女にも困ったものですね。後には、我々とともに世界を“手に入れようと”している仲だというのに………」
再び肩を竦めながら、ため息と吐く。
――本当に、難儀なことだ――
そう、暗闇の中にそっと零して。
〜柊邸・寝室(刹那用)〜
刹那「く、ぁあぁぁああ……………」
大きく口を開き、爽やかな朝を堪能する刹那。
しかし、未だ眠いのか、大きな欠伸が止まらない。
刹那「…………………それにしても、“こいつら”は一体何処から入り込んできたんだ?」
怪訝そうな眼差しで自分のベッドの中でスヤスヤと寝息を立てている恋人達。
その寝顔は微笑ましいものであり、それでいて見ていて飽きない。
やれやれと思いながらも頬は自然ににやけてしまうあたり、恐らく自分は物凄く幸せなのだろうと、心の何所かで実感してしまう。
刹那「にしても、今日は珍しくメリアも寝ぼすけさんか……」
自分の起床時間を確認しても、朝の7時。
その時間帯にメリアが眠っているということは珍しいことなのだが、たまにはこういうことも起こしてほしいと、心底思ってしまう。
それに、彼女は自分達のために頑張ってくれているのだ。
たまにはこんな休暇も与えてやりたいのが、正直な話である。
刹那「さってと、みんなが起きる前に朝飯の支度済ませておこうかな」
そうと決まれば善は急げである。
とりあえず未だに自分の服やらと掴んで放そうとしない彼女達には申し訳ないが、そっと丁寧にその呪縛を解くと、静かに部屋を後にした。
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