D.C.S.B.〜永劫の絆〜
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〜初音島・海岸近辺〜
フェリーを降りたメリア達は皆、ずっとこの海岸に留まっていた。
それは、自分達の最愛の人が帰ってきたらすぐにわかるように。
王達は体を壊すからせめて家に戻ろうと提案してきた。
しかし、彼女達はそれを断った。
自分達の最愛の人が危険な目に遭っているというのに、自分達はのうのうと家で待っているなど誰が出来よう。
彼女達の頑なな決心は揺るがず、遂に王達のほうが折れてしまい、彼らは自分達に出来ること、つまり自分達の世界の勢力を全て掻き集めるため、動き出している。
メリア「………………………………刹那様」
これで何度目になるのか。
他人から見れば耐え難いほどメリアの刹那に対する気持ちが伝わってくる。
自分には出来ることなどなく、ただこうして待っていることしかない。
それがどれほど歯痒いのか、この場にいる者達は身を以ってそれを体験している。
事実、彼女達が目覚めてからそれはもう恐ろしいほどのことが起きた。
第一に彼女達は王達に自分達の気持ちとそれに対する報復を行い。
第二に王達の制止も聞かずに飛び出そうとし、力ずくで抑えられ。
第三に暴走し始める者も出てきたのは言うまでもない。
ルン「父さん、ライガ………」
藍「お父さん、ライガくん……」
娘達も自分達の親と兄的存在を心配する。
するとそのとき……、
「おーーいっ。かーーさーん!ルーンっ!」
上空から最早聞き慣れた人物の声が響く。
その場にいる全員がその声に視線を向ける。
するとそこには、香恋に抱えられているライガの姿があった。
メリア&ルン『ライガっ!!』
二人の声が重なる。
一人は愛しき我が子の無事を安堵する母の声。
もう一人は愛しき己の未来の夫の無事を安堵する声。
二人は誰よりも早く地に降り立つ香恋の下へと向かった。
香恋に抱えられていたライガが地に足を付けた直後だった。
メリア「ライガぁっ!!」
ルンよりも一足早くライガの下に辿り着いたメリアは勢いよく我が子を抱きすくめる。
ライガ「かあさ……わプっ」
勢いよく母に抱きつかれた息子は母の胸の中で息苦しそうにもがく。
ライガ「……か、母さんっ、ちょっ」
メリア「ライガっ!ライガっ!!」
抱きしめる力を一層強めたメリアに対し、もがこうとしていたライガだが、メリアから零れ落ちる雫を目にしてそれを止めた。
メリアから零れ落ちる無数の雫。
それは我が子が生きていたことに対する安堵から出たものなのか。
その理由は、ライガにはわからない。
それ故に彼がすることは今この時をされるがままになるしかないということだ。
それが、彼なりの母に対する謝罪でもありせめてもの慰めなのだから。
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