D.C.S.B.〜永劫の絆〜 PageF 暫く宵の森を疾走する。 だが、ただ疾走しているわけではない。 魔影獣「ゴアアアアアアアアアッ!!!!」 悠「しっ―――――!!」 飛び掛かってくる影の獣の首を斬り飛ばす。 勢いを殺さぬまま落とされた首は押し寄せる風圧に耐えきれず後方へと転がっていく。 魔影獣「ゴオオオオオオオッ!!!」 そんな同類の死を意に介していないのか、闘牛のような影獣が唸りを上げながら疾走する刹那達に突進をかける。 しかし、突進をかけた直後、摩擦音とともにその身は二つに裂かれた。 サクヤ「この程度で我々を倒そうとは。手生温(てぬる)いにもほどがありますね……」 先程の影獣を二つに裂いた本人は並ぶような形で皆のところに戻ると、ため息混じりの声を零す。 そう。今のように彼らは疾走しながらも敵(魔影獣)からの不意打ちを悉く躱し、そして余裕でその防衛陣を突破していっているのだ。 香恋「…………っ…………」 刹那「どうした香恋?」 自分の横を走っていた香恋の異変に気がついたのか、刹那は心配そうな面持ちで話しかける。 香恋「ん?な、なんでもないわよっ。ただ、いきなりの連戦で疲れてるだけ……」 刹那「そっか。それならいいんだけどな……」 刹那は香恋が痩せ我慢とカラ元気を装っていることに気がついてはいたが、敢えて口にせず、そのまま頷いた。 それから幾度となく襲い来る敵の攻防を退けながら森の奥まで辿り着くと、そこには大きな横穴が開いていた。 純一「怪しいよな、アレ………………」 大きく空いている横穴を怪訝な表情で見つめる純一。 ほかのメンバーも同様の表情でその横穴を見据える。 稟「……………まさか、こんなときにも王道ってモノが適用されるなんてな」 怪訝の表情からもはや呆れた表情へと変わっている稟。 さすがにここまで王道的な要因が揃えば誰にでも“呆れ”というモノは出てきてしまう。 諒「まあ、ここの奥に『本体』があるのは間違いなさそうだね………」 寡黙な諒がいつになく饒舌になり、皆の話に加わっている。 サクヤ「それにしても、なんて言うほどの“圧”なのでしょうか………」 寡黙だった諒が饒舌になったことはとりあえず場の雰囲気によりスルーされてしまうが、横穴から漏れている異様な“圧”に言い知れぬ恐怖というモノを感じてしまう。 香恋「まさかこれほどの力を持っているなんてね………。これで封印されているんだから、さらに性質が悪いわね……」 サクヤ同様に横穴から漏れている“圧”に唇を噛み締めながら答える香恋。 彼女は本能的にわかっていた。 このまま進めば取り返しのつかないことが起きてしまうことに。 だがそれ以前に、彼女の『何か』がここには近づくなと警告を発している。 それはこの島に来てからずっとだった。 森の奥には進んでいけない。 洞窟の中には決して入ってはならない。 魂を“共鳴”させてはならない。 この三つの言葉ずっと脳裏に浮かんでくる。 彼女自身もこの言葉はなにかの警告なのだということは理解していた。 だが、最後の『魂を“共鳴”させてはならない』という言葉だけには疑問を抱いた。 何故“共鳴”という言葉が出てくるのだろうか? 自分は一体なにと“共鳴”してはならないのだろうか? そして、“共鳴”とは一体なんのことなのか? この三つの疑問が頭に浮かぶ警告とともに浮かんでくる。 そして、その謎は深まるばかりであった。 香恋「(……………私は、“邪神”と関係がある?)」 警告に対する解(こたえ)を示すのであれば、この仮説が一番ぐっと来る。 止まない不安と疑心。 それは段々と募り、彼女の精神を今このときも侵食していく。 サクヤ「香恋様……?平気ですか?お顔の色が優れませんけど?」 サクヤの言葉にはっと我に返る香恋。 そして、 香恋「そ、そう?私は大丈夫よ。さっきも言った通り、単なる連戦の疲労よっ」 嘘ということがバレバレな作り笑いを浮かべながら、心配するサクヤに返すのだった。 [Back][Next] [戻る] |