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小説
光輝の場合。



俺には、好きなやつが居る。

三年くらい前にそれに気付いてからずっと、片想いしてきたやつが、居る。

第一印象は覚えていないが、よく喧嘩をした。
あいつの言う事に俺はいちいち噛みついて、あいつも俺の言う事に噛みついて、あっという間に大喧嘩になった。
それでも小さかった俺達は仲を悪くする事も無く、友達としてやって来ていたと思う。

大きくなってくると、あいつとの喧嘩で口喧嘩が増えた。
皮肉の応酬だ。
どちらがより相手の足元をすくえるか、ひたすら考えて言葉を発していた。
俺は本をよく読み、なるべくたくさんの言葉を自分に取り入れた。
それでもまだ、友達だった。
俺達の喧嘩が学年で名物と言われていたのを知って、それでまた喧嘩をしても、まだ友達だった。
犬猿の仲、と呼び名がつき、それが少し嬉しかったりもしたのだ、俺は。

その関係が変わったのは、中等部二年の時だ。

急にやつが俺を避けるようになった。
教室が変わっても廊下で会えば笑顔を向け合っていたのに、それが無くなった。
俺はそれにひどく心がざわついた。
多分、不安とか驚愕とか、何よりショックがでかかったと思う。
それでも喧嘩だけはずっと続いていた。
これはもしかしてもしかしなくとも、
―――本気で嫌われた?
俺にそう思わすには容易い出来事だった。

そのショックと共に俺が覚えたのは、俺が奴を好きだという一つの心。

―――ああ、俺はやつを好きだったのか!

我ながらバカみたいな自覚だったが、それは俺にとってこれからをもっと辛くする心だった。

友人に避けられるのは悲しい。
が、仕方が無いと思える。
人付き合いとは難しいものなのだから。
では、それが友人でなく好きな相手だったら?
それは俺の心の柔らかい部分を簡単にえぐった。
初めて覚えた恋が失われていた、という現実が俺を大きく大きく傷付けたのだ。
初恋は実らない、と言う事を初恋を覚えた直後に体験したのだ。


今思うと相当むごい、と感じる。
うっすら口元に微笑が浮かぶのも、もう慣れた。


高等部に上がる事をきっかけに頭を金髪に染めた。
新たな恋の為に自分を磨いておこうと思ったのだ。
あとは、かっこいいし染めてみたかったから、という理由が大きいのだが。
それから、中等部の時に聞いた、噂。

―――あの子って高等部入ったら風紀委員に入るらしいね。あの人かっこいいよね、風紀委員とかお似合いかも!

風紀委員。
やつがそれを自分で決断しての行動なら、俺もただ高等部に上がるだけではだめだ。
何かしなければ。
俺の諦めの為にも、やつと対等な立場に立っておきたい。
そうだ、見た目を変えよう、それも大きくガラリと!


でも好きでいる事をやめられないまま、ずるずると三年目に入った。



そしてやつは、




[*退却!][進行#]

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