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短編小説
誓い
忙しいってわかってる

そんなの仕方ないのに

寂しい、と思ってしまう。
『誓い』

「あれ、ボスは?」
「あぁ…急に仕事出来たみたいで出かけて行きましたよ」
「そう…わかった」
「どうかしました?」

私の問いに答えた部下が、心配そうに顔を覗き込んできた。

「なんでもない。ありがとう」
「いえ。久しぶりのお休みなんですからゆっくりしてくださいね」
「ええ」

部下はそう言って自分の仕事場に戻った。

そう、今日は久しぶりの休み。
だから恋人のディーノと一緒に過ごそうと思っていたのだ。

ディーノはキャバッローネファミリーのボスで、私は幹部。
休みなんてそう簡単には取れない。

「今日は…誕生日…だったんだけどなぁ…」

小さなため息と共に呟いた言葉は風に流されて消えた。





外はすっかり暗くなり、少し肌寒い。
時刻は午後11時。

「遅くなっちまったな…」

屋敷に入り、真っ先に彼女の部屋に向かった。

もう寝てしまっているだろうか。
それでも今日が終わる前に渡さなければいけないものがある。

ドアをノックしても返事がないので悪いと思いつつ勝手に開ける。
すると名前はベッドではなく、ソファーで何も掛けずに寝てしまっていた。

「…名前?」

ソファーの近くに膝をつき、彼女の名前を呼ぶと微かに身動ぎした。

「ん…ディ…ノ…」
「?」
「…のばかぁっ」

ズルッ、という効果音がつきそうな寝言に思わず目を丸くする。
普通ここはお約束通り「すき」とかではないのか


しかし、よく見ると名前の頬には涙の跡。

「一緒にいれなくてごめんな」

罪悪感を覚え、頬をそっと撫でながら呟くように謝った。

「ぅ…ん、ディーノ…?」

くすぐったかったのか、名前が目を覚ます。

「ただいま、名前」
「…っ…」

いつもなら「お帰り」と返してくれる名前はそう言う代わりに泣き出した。

「え、ちょ、どーしたんだよ…」

いきなり泣かれたのでどうしたらいいのかわからない。

「な、なんでもないの。ごめ…」

なんでもなかったらいきなり泣くはずはない。
名前がまだ何か言おうとしていたが、構わずに強く抱き締めた。

「…ごめんな」
「ディー…ノ?」
「今日はお前の誕生日だったのに、仕事はいっちまって…」
「そ…なの仕方ないよ。ボスなんだから」


ちゃんとわかっているくせに泣いてしまった自分が情けなかった。
ディーノはなにも悪くないのに、本当に申し訳なさそうに私を見つめていて、胸が痛かった。


だけどそれ以上に、ディーノが私の誕生日を覚えてくれていて、私の気持ちもわかってくれていた事が嬉しかった。

「そうだけど…」
「そんな顔しないで?でも、来年はちゃんと一緒にいてね」
「来年だけじゃなくてずっとずっと、一緒いるよ」

ディーノがそういう事言うから、また涙腺が緩む。

「絶対、だよ?」
「ああ、約束する。だからその印にこれ、受け取ってくれるか?」

オレが差し出したのはシンプルなデザインの指輪。
ちらりと視界に入った時計は11時50分を示していた。

ギリギリセーフ、ってとかか

「オレと、結婚してください」

名前はしばらく目を丸くして、涙目で微笑んで「はい」という返事をくれた。



どうしても、君の誕生日に伝えたかったんだ。

それは消えることのない、愛の誓い




あとがき。

なっっが。←

初ディノ夢(笑)
甘めですねー

いつかお馬鹿なヒロインを書いてみたいとか思ってます(笑)←

ここまで読んでくれた方、ありがとうございます!!

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あきゅろす。
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