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短編小説
約束(骸夢/10年後設定)
『待っていてください』


あなたがそう言うからずっと待っていたの




【約束】



朝起きると新着メールが一件。
少し寝ぼけながらメールを開くと眠気なんて微塵もなくなった。


メールは骸からのもの。
仕事で忙しく、遠距離恋愛というのもあって、多分一年くらいあっていない。


『お久しぶりです。お元気ですか?』

なんてつまんない手紙みたいなはじまりかたをしている。
そこまではいい。

そこまでは。


『今日で丸一年あっていないことになりますね。
長い間待たせてしまってすみません。
今日からはもう待たなくていいです。』

その次に目に映った文章は何度読み返しても理解できなかった。

『別れましょう。』


信じられない、というよりふざけんな、て思った。

自分でも何を考えていたのかよく覚えていないけれど、急いでボスに電話をかける。

呼び出し音が2、3回なって聞き覚えのある声が聞こえる。

「ボス?今からイタリア行くから。骸、いるよね?」
「え?今から?骸はいるけど…」

「わかった」

それだけ言って電話を切った。

そのまま必要最低限のものだけ持って空港に向かう。
ボスが何か言いかけたみたいだったけど気にしてなんかいられない。

今日は仕事…情報屋としての任務は入ってないし、骸もアジトにいるらしい。


数時間後
私はイタリアにあるボンゴレのアジトにいる。
向かったのはボスの指令室。

ノックして返事が来る前にドアを開けた。

「名前!?(ホントに来た!!)」

「骸は?」

「部屋にいる…と思うけど…」

いまだに状況がつかめていないボンゴレの10代目は必死に頭を回転させている


なぜ名前がイタリアまで来たのか。

なぜ骸を探しているのか

そして

なぜそんなに怖い顔をしているのか。



骸の居場所を確認して、その場所に向かう。

ノックもせずにドアを蹴破り、部屋に入る。
鍵が壊れる音がしたがそんなことは気にしない。
寝ているらしい骸を殴ろうとベットに近寄り思い切り拳をふりおろす。

が、手応えはない。
先程ドアを蹴破った音で目が覚めていたのだろう。
避けられた。

部屋に入ってきた者が誰だか分からなかったらしく、骸は私の顔をみて目を丸くした。

「名前…」

「今朝のメールは何?」

不機嫌な時にしか出さない低い声で問う。

「あれは…」

「あれはメールで言うこと?せめて電話にしなよ。直接言う勇気もないの?」

「違います!」

何がちがう?

仕事中かもしれないから、こっちから電話はしなかった。
メールだって毎日したら迷惑だから週に2、3回くらいで。

寂しくてもずっと我慢してた。

なのに。

『別れましょう』

はないんじゃない?

「もう…あなたに我慢させたくないんです。」

我慢…?
そりゃしてたよ
けどね、ずっと待っていたのには理由があるんだよ。

「私は骸が『待ってて』って言っていたから待っていたのよ」

ずっとずっと
一年も

携帯で電話しようって思っても、きっともうすぐ会えるって信じてこらえてた

「会いに行こうと思えばいつでもこれたのにずっと待ってたんだよ…」

会ったら離れられなくなるから。

「ずっと信じて待っていたのに……」

視界がぼやける。

「…さよなら」

言いたいことだけ言って部屋を飛び出した。


こんなの八つ当たり同然だ。
結局、待ってることしかしていないくせに骸にすべて擦り付けて。

行動しなかったのは私のせいなのに



アジトを飛び出して空港に向かった。

涙で頬が濡れていて少し冷たい。

何度も人にぶつかりながらひたすら進んだ。


「名前っ!!」

後ろから骸の声が聞こえる。
追いかけて来たのか。
別れたんだからそんなことしなきゃいいのに。

戦闘で鍛えられている彼と違って、普段ひっそりと暮らしている私はすぐに追い付かれた。
腕を捕まれ進めなくなる。

「離して」

顔なんか見れなかった。

「嫌です」

って即答されて、何か言ってやろうと思って顔をあげたのに何も言えなかった。

目の前にいるのは、泣きそうな顔をした骸。

「な…」

「ごめんなさい」


声が震えている。

なんで骸がそんな顔をするの

「別れよう」って言い出したのはあなたでしょう

どうして追いかけて来てまで謝るの


「骸は謝らなきゃいけないこと…してないでしょう?」

さっきのは私が勝手に怒っていただけで骸は悪くない。
確かに「別れよう」って言われたときはそれはないだろうって思ってた。

でもね?
あれも私のことを思って出した『答え』なんでしょう?


「さっきは勝手に怒ってごめんなさい。」

できるだけ涙を拭って、その時できた精一杯の笑顔で

「バイバイ」

って言って、手を振り払い、また空港に向かって歩き出す。

骸…大好きだったよ。

やっと空港について、ロビーに入るといきなり後ろから抱き締められた。

「誰?」なんて聞かなくても分かっている

どうしてまだ追いかけて来るの?

っていうか場所を考えて欲しい。

こんなことしてたらすぐに注目される。

…というか、されてる

「なんで追いかけて来るの?」

「名前が僕の話を聞いてくれないからです。」

今更何を話すって言うんだ。
いや、確かに聞かなかったけど。
でもずっと抱き締めたままっていうのはかなり恥ずかしい。

「とりあえず離し…っ!?」

喋れない。
口が塞がれている。
骸の唇で


別れよう、って言ったりキスしてきたり。
こいつの考えることはよくわからない。


だんだん息が苦しくなってきて、骸の胸をドンドンと叩く。
周りの奴等の声なんて聞こえなくなっていた。


やっと酸素を取り込めるようになり、肩で息をしていると骸が話し始めた。

「僕は…貴女のためだと思って別れようって言ったつもりでした。」
「…?」

何が言いたいんだ。

「でも結局は自分が辛いだけで、逃げようとしていたんだと思います。」

骸は淡々と話し続ける。

逃げようとしたのは私も一緒。

「もう一度だけ僕にチャンスをください。」

真剣な顔をして、私の目をみている。

「もう…『別れよう』なんて言わない?」

「はい」

「絶対…?」

「はい」

本当は
メールを読んだとき胸が張り裂けそうなくらい痛くて、息ができなくなりそうなほど苦しかった。

「今度こそ、幸せにしてくれる?」

あなたが「待ってて」っていうなら、戻ってくるまでずっと待ってるよ。

ちゃんと帰ってきてくれるなら、いくらでも頑張れるから。

「はい」

っていう返事がまた、私を泣かせる。

「次はないからね!!」

泣きながらだったけど。
幸せそうに彼女は笑った

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あきゅろす。
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