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FinalFantasyT
30.一つの希望
「……?優羅」


まだ夜が開ける前…ウォーリアは目を覚ます
まるで…何かを感じ取ったかのように…


 ……優羅が、居ない?


隣で眠っているはずの優羅の姿は無い…
何故か、言い様の無い不安感に駆られウォーリアは部屋を出た


 何故だ…。何故こんなにも焦っているんだ…?


理由は分からない…
しかし、早く見つけなければいけないと頭が訴えているような気がした
ウォーリアは自分でも知らないうちに足が進む


まるで…そこに居ると分かっているように


「……優羅?」


そこは、宿の共同洗面所だった…


『……ぅ…おぇ……ゲホッ……ゲホッ…』


「っ!優羅!?」


苦しそうに顔を歪め、口を押さえて吐くのを押さえようとしていた優羅にウォーリアは駆け寄る


『っ…ぁ……ぅ………かぁっ、ぁ…』


優羅はウォーリアを見るなり目を見開き、何かを喋ろうと口を動かす…
だが、それは言葉にならず…口から溢れる赤黒いものを吐き出すだけに終わった


「優羅っ!しっかりしろ!!」


よくよく見ると、洗面所の台にも赤黒い血だまりが
優羅の体にも付いている

優羅の目に光はなく……グルグ火山で見たような姿になっていた
勿論…あの時の比ではない

身体中にあざというあざが浮き上がり、痛々しいなんてものではなかった…


『うぉ……り………あ……』


よろけてくずおれそうになった優羅をウォーリアが支えると、優羅はひゅぅ、ひゅぅと息をしながら彼の名を呼ぶ…


 たすけて…


そんな優羅の声が聞こえた気がして、ウォーリアは優羅を抱きしめる


こんなに苦しんでいる優羅が居るのにも関わらず何も出来ない自分に苛立ちを覚えるウォーリア


そんな思いを感じ取ったのか…優羅は掠れた声でありがとう…と呟いた


「…何故…」


 私は君に…何もしてやれないのに…


『…いっしょ…に…居るだけで……くるしくなくなる……から……』


「っ!……。」


 嘘だ……こんなにも…苦しそうにしているじゃないか…


荒い息をし続ける優羅の髪を優しくすく…
口元の血を拭うと、ウォーリアはそっと…優羅の唇に自分の唇を押しあてた


『っ……んぅ…はぁ』


鼻をつく鉄臭さ…鉄の味…
それは、彼女が苦しんでいた証…
そんな優羅は困った顔をしながらキスを受け入れる…


『鉄の味……やじゃないの…?』


「どうだろうな……」


長いキスを終え、チュッ…とリップ音を残して唇が離れる…


少々名残惜しそうにしているウォーリアだったが
このままここにいさせても危険かと考え、優羅を横抱きにすると部屋へと戻る…


『ぁ………片付け……』


「…大丈夫だ、私がやっておく…君はもう寝なさい」


そう言うと、ウォーリアは優羅の額に手をあてスリプルを唱えた


『っ……』


優羅が眠りにつくと、ウォーリアは直ぐに片付けに向かった…


 ………。絶対に、助けなくては…


そう心に改めて誓うウォーリア…
この世界に治す方法があると信じ…希望を持ち続ける…………


そんな思いと裏腹に残酷にも時は彼女の身を蝕むのだった…






そして、夜が明ける……


『……ふぁぁ〜』


何時ものように、鳥の鳴く声で目を覚ます…
訳ではなく今回は普通に目が覚めた

しかし、体のだるさが影響してか起き上がる気にはなれない…


 昨日……何かあったんだっけ?


寝起きの脳をフル回転させ思い出そうとする…
そして暫くしたあと、やっと夜が開ける前の一件を思い出すことができた


『あー、きっと心配掛けまくっただろうなぁ…』


体に違和感を感じ只…確認するために洗面所に向かったのだが、突然の吐血と激痛で帰るに帰れなくなったとき彼は来た…


 まるで…ヒーローか憧れの王子様みたいだ…


こうタイミングが良すぎると驚きを通り越して図られているのではと思ってしまう


 そういえば、ウォーリア…いきなりキスしてきたんだよなぁ……


『っ!/////』


思い出すと直ぐ様顔が赤くなる…
ブンブンと頭を振って思い出さないようにするが意味はない…


 あっ、アイツっ!なんでよりにもよってく、口なんかに……///
 し、しかも結構長い時間キスしてたしっ!


ゴロゴロと転がりながらあーでもないこーでもない
と考え続ける優羅にいつの間にか部屋にいたウォーリアはしれっとした顔で


「悪気はなかった」


などと言うものだから優羅は飛び起きて「この獣めっ!!」と叫ぶが貧血による目眩でふたたびベットに倒れ込んだ


「優羅?」


『……うぅ。頭くらくらする』


「今日はギブ…」と優羅が言うと「ならサルテたちを呼ぶか?」と返された


 絶対に狙ってるなこいつっ!


『んー。やだ、今日はウォーリアも一緒に休め!』


そう言うと、ウォーリアは微笑む


「ふっ……仰せのままに、姫…」


『うわっ…(;゜゜)はじめて聞いたよウォーリアの気障ったらしい言葉』


と言うか大分前とキャラ変わってね?と思いながらも優羅はほんの少しだけ頬を弛めるのだった…



続く






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あきゅろす。
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