FinalFantasyT
21.クレセントレイクの町にて
『へぇ。思ったよりデカイ町だな。こんなにいりくんだ場所なのに…………………』
「ちょうど町を囲うようにある山のお陰で嵐や突風から船を守るようになっていてな。そのせいか船の交流が多い貿易の町でもあるんだ。まぁ。ここに来るまでに特殊なことをしないと町まで船ではいけないけどな」
そう話すヤヌスの声はどこか嬉しそうで、他の四人は彼がこの町を好いていることが良くわかった。
『ほー、初耳』
「私もあんまりクレセントレイクの町を知らないのよね?」
「僕も!聞いていても行けなくて……」
「どうせなら、ヤヌスに案内をしてもらう。というのはどうだ?」
いきなりのウォーリアの提案に、四人は驚くが、優羅はナイスアイディア!とばかりに指をならした。
『それ、いいねっ!ヤヌスが良いなら案内してくれ♪』
「…………………いいのか?」
「あぁ。知らないで町を歩くより、少しでも知っていた方が身のためだからな」
「おぅ…………………そうか。分かった」
『いぇーい。決定な!いい観光場所頼むっ!』
いかにも観光に来たというノリの優羅にため息をつくウォーリア…
「優羅……我々は観光で来たわけではないのだからな?」
少し低めに喋ると優羅は降参のポーズをとって言った。
『わかってる。分かってるよ〜?ウォーリア決して観光場所見たさに案内してもらいたい訳じゃないから。あくまでついで』
後でなんか、買っとこ。
観光旅行感が半端ない優羅を見てウォーリアたちは思った。
…………………この先大丈夫なんだろうか?
そんなことを思ってると。いつの間にか優羅はいなくなっている……
「!!!どこにいったの!?」
「…………………探さないとな…」
「どこ行ったんだろ?」
「はぁ。全く優羅は知らない町では道に迷うからとあれほど言ったのに…」
ウォーリアはため息をつくと優羅を探しにいくのだった。
『…………………はぁ……参ったな』
そう言いながら頭をかく優羅はクレセントレイクの町にある展望台に来ている。
展望台から町を眺めていた優羅はぼそりと呟いた。
『…………………「君を愛している」か……』
あの想いのこもったあの瞳はきっと揺るぐことはない。
だからこそ…………………辛かった。
《お前は……バケモノだ…人を愛することなど…出来ない………》
っ!またかよっ!私は…私はバケモノなんかじゃ…ない……
『バケモノなんかじゃ…ない…よな?』
自分に起こり始めた異変…………………
あのときからずっと続いてる。
私は自分でも彼に好きだと言った。
彼も自分を好きだと言った…………………。
でも…………………もしこの旅が終わって別れることになって。
そうなったら。
向こうじゃ「いつも通りに」暮らせないかもしれない…………
それ以前に…このままの自分で居いられるかどうか………
でも、彼のことを考えれば考えるほど好きな気持ちが止まらなくなる…………………
『あー。こんなに好きになってたんだ……ウォーリアのこと……』
いつの間にか涙が流れていた。
それをぬぐうこともせず、優羅は只夕日が沈みかかっている空を眺め続ける。
『あ。そう言えば…………………』
ふとあの日の情景が閉じた瞼の裏に浮かび上がる。
あの日もこんな夕日を眺めていた。
彼はなにか物思いにふけるような顔をして。
自分はそれに見とれてた。
あのときから自分は…………………私はウォーリアのことが好きになっていった。
違う。ずっと……ずっと会う前から、私は彼が好きだったんだ…
会えたとき…画面の向こうの人という感じはなかった。
遥か昔に会ったことがあるような…そんな感じがした。
「優羅……?」
後ろから、いつもの声が聞こえてくる。
優しくて、時に厳しいあなたの声が……
『どうし……?ウォーリア?』
自分が振り向くと、彼は声をつまらせたようだった。
そう言えば涙。拭いてない……
『あははっ……どうしたんだよ?随分としけた顔になってんじゃん』
そう言って笑うと。ウォーリアは苦しそうな顔をした。
「…………………君は。もとの世界に、帰りたいのか?」
『っ!』
何で……そんなこと言うの?
只でさえ、決意が揺らぎかけているときに…………………。
「私は、君を…………………もとの世界に帰したくない……」
『……え?』
自分が拍子の抜けた声を出すと。ウォーリアは自分を抱き締めてくる。
『わがままかもしれない、いつか元の世界に帰るのであろう君が…自分の元から居なくなることを考えると………心が張り裂けそうになる…』
分かってる…………………
貴方が自分を愛していること……
我が儘だって構わない………
ずっといて欲しいと言って貰いたかった。
そうだ……私は言って貰いたかったんだ。
貴方に、ここにいて良いのだと…
『…………………怖いな』
もし、自分が自分でなくなったら…あの声の言うとおりバケモノになったら…
私は貴方を………好きでいられるだろうか?
「何が……?」
言いたい……
でも…………………これ以上言えば……
自分の心が決壊しそうになる。
でも、言ってしまえば。
少しは軽くなるだろうか……
『ウォーリア。私が倒れたとき、何があったか分からないよな』
「……?あぁ」
『私は……眠ってる間。ずっと白い世界にいた』
「そうか」
『知らないはずだった……。知らないはずだったんだ…………………』
「…………………。」
『なのに……なのにっ!私はあの世界を懐かしいと感じてる!おかしいんだ……』
懐かしさ…そして何より母の声。
なぜ、いない母の声が聞こえたのだろう…
あんな世界。何故懐かしく感じるのだろう?
今の優羅は「何も知らない」ことが逆に恐ろしく感じた…
「…………………君は君だ」
そう言ったウォーリアは優しく優羅の髪を鋤くように撫でる。
しかし、それでも恐怖は和らがない…
『分かってる…………………でも…………………声が、聞こえるんだ』
「……声?」
『……っうん。私のことを……化け物だって言う声が……聞こえてっ……』
泣きながら、自分はウォーリアの胸にすがりつように言った。
いつの間にか話し方が昔に戻っている…
優羅はそれでも構わなかった。
只…知ってほしいと思った…他でもない。
「彼」に………
あの白い世界から戻って。自分の体におかしいことが起き始めていた。
身に覚えのない記憶のような夢。
皆には聞こえない声。
何もかもが怖くなっていた。
『…………………怖いよ。怖くて怖くてたまらない』
さっきは無理矢理帰ってからのことに意識を向けていた。
そうしないと、心がくじけそうで。
「君は化け物になどならない。絶対に……させない」
そう言ったウォーリアは、より強く私を抱き締めた。痛いくらいに。
『ウォーリア……私は、まだ……ここにいて、良いよね』
未来はまだ分からない。
「っ!当たり前だっ!馬鹿者……」
此処に居ていいか?って聞くと。ウォーリアそう言って強く抱き締めてきた。
息をさせないつもりかってくらい強く。
『…っ。苦しい…ウォーリア…………………』
恥ずかしさと苦しさでバタバタしていると、ウォーリアは穏やかで、でも心配そうな顔をして自分の顔を覗き込んでくる。
きっと、真っ赤になってるんだろうな自分……
じゃなくて、力緩めてください…ウォーリアさん…じゃないと落ちる………
でも、居場所を再確認できた。
それだけで嬉しいよ。
「あまり無理はするな、辛いなら……頼れ」
『うん。そーしとこ♪』
うん。大丈夫……
明日からは。またいつもの優羅になってる。
だからっ…………………
『少しくらい泣いたって、良いよね?』
「あぁ」
『っ…………………』
そして私は声をあげて泣いた。
こんなに泣いたの、最初で最後かもね。
…………………もう。挫けないよ。
続く…………………
______
あとがき
んー。あんまりまとまってない…………………
ヒロインの心の葛藤を書きました。
ウォーリアさんマジ男!
なところ書きたかったんだけどな( ;∀;)
うまくいかないや。
てか、ラブいの書かないんじゃなかったのかよ…
と。自分に突っ込んだりしています…はい。
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