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FinalFantasyW
2.出逢いは、必然と偶然の重なり
セシルたちが約束した次の日……



見せ物小屋、もとい「エルブンエイブ」はバロンの郊外まで来ていた。


『人が多い、やっぱり国の中心だけあって活気がありますね』


噂をたよりに次々と集まってくる人を、幕の隙間から見ながらアルティスは少し嬉しそうな、そして呆れたような感じで呟いていた。


人の嬉しそうな顔を見るのは嫌いじゃない、例え我々が見せ物だとしても……


そう思っていると、後ろからこのエルブンエイブの長と言えるラットス(アルティスは彼の事をボスと呼んでいる)が現れた。



「お前は元のところに戻っていろ。貴族たちがお前を見たいそうだ」


そう言って立ち去るラットスの後ろ姿をアルティスはただ黙って見続けていた。


軽蔑ともとれる眼差しで。


 貴方はどうせ僕たちの事を物かなにかだと思っているのでしょう。だから…………


 あんなことを平気でできる。


そう思いながら見上げた先には、巨大な角を持ったトナカイにも似た動物の骨があった。


この骨はつい最近まで生きていたガルナーシュアと呼ばれる種の生き残りの一匹であった。


ガルナーシュアの生き残りであった彼女はソーウェルという名の年老いた老婆だった。


彼女はこのバロンに来る少し前「もう見せ物として使えない」からと殺され、毛皮を剥がされ骨にされた。


ソーウェルはいつも一族の事を話してくれていた。アルティスにとっては祖母の様な存在だった。


アルティスが「何故殺したのか」と声を荒らげて問い詰めると彼は…………………


(「元々死にそうなやつをもっておくほどお人好しではないんでね。死にそうだと思ったら速めに処分した方がいい。それだけだ」)


さも当たり前のようにそう答えた。


そして、このエルブンエイブは見せ物小屋という表の姿と、人身売買 を行うブローカーとしての姿があった。


裏の名前はpleasure-palace「快楽の館」


その名の通り、汚れたやつらが行き交う場所であった。


そうやって身売りされていく者の中には泣き叫んで拒むものもいた。


だが、彼等はそんな人達を従わせるために薬を使い。はたまた心を壊して人形のようにしていった。



そうやって彼らは私腹を肥やしているのだ…


そう思いながらラットスを睨んでいると
突然ラットスは立ち止まり、顎髭を弄りながら


「あぁ、後いい忘れていたが……」


「貴族だけでなく、子供も来るらしい。なるべく話しかけられても答えるなよ」


 ・・・?子供?珍しい。何故子供を許可したのだろう……


そう思ったアルティスはその疑問は口に出してみた。


『何で子供が?普通は見せ物場止まりでここには立ち入り禁止のはずです』


そういうとラットスは髭を弄りながら困った様に答えた。


「本当は入れるつもりはなかったが、その子供たちが、貴族のご子息と王に拾われたという子でな。追い返すに追い返せなかったのだ」


『そうなんですか』


 そうか確かに貴族の子と王に拾われた子ならそうそう追い返せない。


忌々しそうに顔を歪めているラットスを見ながらアルティスがそう思っていると、ラットスは急に顔をにやけさせてぶつぶつ何かをいい始めた。


「だが、これはいいチャンスだ。子供を丸め込めば後々個別の客が手にはいる……………そうすれば……」


 この人は相変わらずか。


はぁ、とため息をつき「戻っています」といって戻ろうとすると。


「来たやつらにはなるべくお前お得意の愛想を振り撒いておけ。勿論、俺のためにな」


 本当に何でこんな奴ばっかりなんでしょうか…………………。


思いっきりため息をつくと。アルティスは自分のいた牢に戻っていった。


『あれっ?二人とも何でここに?』


アルティスが牢の近くまでいくと、そこには

トェルトとゼルクゥスの二人(二匹?)がアルティスの牢にいた。


勿論人の姿で……


フェンリルの一族は人のいる場所でも活動できるように人の姿いられる術をかける。


いわば、トードやポーキーの術のようなものである。


その術をかけた二人はアルティスを見るなり


トェル「アル、場所を移動するよう指示が入った」


ゼル「何かわかんねーけど、オレらはそこに行ったら元の姿に戻れってさ」


『・・・全く指示が早いですね。あのクソブt…………ではなくボスは』


危うくクソブタと言いそうになり、慌てて言い直すと二人を連れて指示されたところへ向かったのだった。



セシルside――



一方その頃セシルたちは、複数のバロンの貴族たちと共に珍しい動物たちを見ていた。


内装は明るく、さながら動物園のようで陰湿な雰囲気とはかけ離れていた。


セ「わぁー。凄いなぁ〜見たことのない動物ばかりだ」


カ「・・・はぁ、何で俺まで」


ロ「いいじゃない。貴方だって気になっていたでしょう?」


カ「っ!き、気になんて。していない……」


やや語尾が小さくなってそっぽを向いたカインを見てセシルとローザはクスクスと笑っていた。


カ「わっ、笑うなっ!」


そう言ってカインが二人を睨んでいると。


「おーい、お前たち。向こうの準備が出来たようだ。珍しいものを見せてくれるらしいからくれぐれも失礼の無いようにな」


そう貴族の一人が言うと。セシルたちは「ハイ」と答えて楽しそうに入っていった。


ただ一人を除いて。


カ「…………………」


カインは二人の姿が消えると「ヤレヤレ」と言いながら同じように入っていった。



アルティスside――


『とても立派な場所ですね』


この場所に来るなり着替えさせられたアルティスは呑気にそんなことをいっていた。


しかし、他の二人は不機嫌そうに唸るとトェルトが


トェル「全く、アルを着飾り我々に鎖など繋いで何をしようと…………………」


トェルトとゼルクゥスの姿は今は大きな青い狼の姿で、首と前足に鎖がつけられていた。


アルティスの姿はまるで何処かの国の姫とも思えるような姿で、美しくそして何より神秘的な雰囲気を醸し出している。



『まぁまぁ、落ち着いて。ボスは僕の事を人集めの道具としてしか見ていない。きっと今回も僕を女として使おうとしているんですよ……だってほら、僕って結構女顔ですし?』


二人にしか聞こえない程度の音でアルティスはそう言うと、少し辛そうに笑った。

 まあ、女顔以前に女ですけど。

ゼル「だけどさ……」


そうゼルクゥスが言おうとしたとき。


「お前たち!話をやめなさい!これから客人が来ます。くれぐれも言葉は話さないように」


そう言って入ってきたのはラットスの右腕に当たる女のナーリェだった。


ナーリェは手に持っていた鞭をパシンと手に叩きつけると、今度はアルティスのすぐ近くに鞭を降り下ろした。


パシィンと乾いた音を響かせ鞭で床を叩く彼女はさしずめ悪どい女王の様だった。


ナ「返事をしなさい!」


『…………はい』


ナーリェはその反応に満足しなかったのか。もう一度鞭を降り下ろそうとするが、


ラ「ナーリェ、客だ。鞭をしまいなさい」


タイミング良く、ラットスが客を連れてきていた。


ラ「さぁさぁ、皆さんご覧あれ。この風を司るフェンリルと、共に産まれた美しき人ならざる者を」


アルティスが幕の上がった観覧席に視線を向けると、貴族たちは「おぉっ」という声を出し、物珍しそうにアルティスを見た。


アルティスはその視線の中で無意識にラットスが言っていた子供を探していた。


――きっと来ているはず。どこにいるのでしょうか?


好奇心旺盛なアルティスはそうやって目だけをキョロキョロさせていると


「わぁぁ〜♪きれいな人。本当にあの狼と一緒に産まれたのかしら?信じられないわ」


観覧席の一番端にアルティスの探していた者たちはいた。


そこにいるのは銀色のふわふわした髪と紫の瞳の少年と、

金色の髪が雲間からさす光のようなきれいな少女。

そして、少し離れたところにアルティスを凝視している濃い金色の髪が特徴的な蒼い瞳をもつ少年だった。


不意に視線を向けると、その少年と目が合った。

少年は慌てて視線をそらして、頑張って目を合わせないようにしている。


 ム。ちょっと酷くないですか?あの子…


そんな姿にアルティスは少しだけ頭に来たものの、そんな顔はせずに黙って少年を見た。



そして、アルティスは名も知らないその少年たちにニコリと笑いかけると、くるりと背を向け狼のもとに歩いていった。


「あっ」


そう声に出したのは銀色の髪の少年。


狼のもとに行くのは危険だと声に出そうとしていたが、隣の少女に指をたてられ「静かにして」といわれているのが聞こえた。


『ご安心下さい。彼等は私の兄妹、危害を加えるようなことは致しません』


アルティスの言葉にざわざわと観覧席の人たちはざわめく…………………


彼等はアルティスが話せるとは思っていなかったらしい。


ちらりと横目でラットスとナーリェを見るとラットスはよしよしと頷き。ナーリェは「自分の言ったことを聞いていなかったのか」という目で見ていた。


 ………ナーリェにはどういって納得させましょうか。まあ、きっとボスが何とかしてくれるでしょう。


とボスに責任を押し付ける形で一回この事を頭から追い出すと。


『皆様、このエルブンエイブにお越しいただきありがとうございます。最後は私たちの舞を見てお帰りいただければ幸いでございます』


いつも通りの言葉。最後は舞で締めくくる。


そう言うと、アルティスは少し前に出てラットスに目で「音楽を」と頼むと。ラットスは頷いて音楽を流し始めた。


舞が終わると観覧席からは盛大な拍手が贈られていた。


子供たちも顔を輝かせて拍手をしていた。


もう一度お辞儀をすると、ラットスは


「これで特別観覧会は終わりです。皆様お帰りはお気をつけ下さい」


そう言って締めたのだった。




カインside――


 俺は正直ここに来たくはなかった。確かに気になっていたのもある。でも、それだけではなかった。


 噂を聞いていた。あの見せ物小屋は人さらいをやっていると……。


 だから、ローザやセシルを危険に会わせたくはなかった。


 だけど、あの少女を見て驚きのあまり声もでなかった。


 それほどに、綺麗だった。髪は快晴の空のみたいに輝いて、瞳は月の様な静けさを感じる金…………………。


 じっと彼女を見ていると目が合い、慌ててそらそうとしたら。笑いかけてきた。


 でも、彼女の笑みは何故か、悲しそうな感じがしたのを覚えてる。何故だったのかまでは分からなかったけど。


 俺はあの時確かに、また会いたいと思った。いや、助けたいと思った。悲しみのない本当の笑顔で笑ってほしい。


 そう、思った。


―バロン王に伝えてみるかな。


そう思いながら、カインは見せ物小屋を後にするのだった。



アルティスside――


その頃アルティスたちは…………………


ナ「全く、あれだけ言葉を話すなと言ったのに。あなたは聞いていなかったようね」


バシィッ!!


今日の一件でご立腹のナーリェの鞭をくらっていた。


『うっ!!』


鞭は顔以外の場所に血が滲むほど打ち付けられている。


顔は「使い物にならなくなったら困る」と言うラットスの言い付け?の様なものにより、ナーリェは渋々顔に当てていなかった。


なかには裂傷のようになっている部分もあり、アルティスは傷の痛みに顔をしかめるしかなかった。


ラ「ナーリェ。それくらいで止めなさい。ソレは大事な客寄せ材料なのだから」


ナーリェはその指示に少しむくれたような顔をしたが、ここの最高責任者であるラットスの指示は絶対で。渋々鞭をしまい戻っていった。


ラ「それくらいの傷なら自分で治せるだろう。さっさと治せ」


ラットスは今までと違う見下したような目でアルティスを見ている。


『…………………』


アルティスはよろよろと立ち上がるとラットスに軽くお辞儀し自分の部屋に戻っていった。ゼルクゥスとトェルトはアルティスのあとに続くように部屋をあとにしていった。



トェル「アルティスッ!大丈夫か!すぐに治す。傷をみせ………」


『いいです。自分で治します。二人は部屋に戻っていて下さい』


ゼル「なぁ…………アルティス。大丈夫なのか?」


一目見ても大丈夫ではない傷をみながらトェルトもゼルクゥス(人の姿)も心配そうに伺うが、アルティスは心ここにあらずの状態で。いまいち話を聞く雰囲気ではなかった。


ゼル「全くよ。何かあったら呼べよ?」


ゼルクゥスがそう言うと、アルティスはこくりと頷き自分の部屋に入っていった。


トェル「アルティス。大丈夫……なのか?気になるな」


ゼル「まぁ、明日になったらもとに戻るだろ何てったって明日は……
このイカれた見せ物小屋からは逃げたすんだからな」


そう言って二人は自分の部屋に戻っていったのだった。



______
あとがき

長いですね。ええ長かったですとも。

読み返してあまりの文才のなさに泣きましたからね。自分…………………

でも、諦めませんよ!頑張って書き終えてみせます!




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あきゅろす。
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