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ソラゴトモノクロ
06





「はぁ……」


溜め息を溢す。もう真っ暗になった夜空を見上げた。

明かりが少ないから、星が見える。
この世界は、結構見えると錯覚するがきっと同じくらいなんだろう。
確か人識くんも言ってた気がする…。

人識くんに、会いたいな。

迎えに来ないかな。
あたしは夜道を見た。そこに人識くんの姿はない。


「零崎を探してるの?友恵ちゃん」
「……いーくん。先に寝てていいのに…」


部屋からいーくんが出てきた。夜の散歩をちょこっとすると言ったのに。


「君の散歩って近いんだね」
「迷うのは嫌だからね」
「付き合うよ、ぼくがいれば迷わない」
「いいの、星が見たかっただけだから」


そう答えればいーくんはあたしの隣で同じように空を見上げた。


「萌太くん、綺麗な顔して性格悪いから、あまり気にしないで」
「性格悪い?そんなことないよ。いいお兄ちゃんだよ」
「悪気があってああ訊いたわけじゃないだろうけど、気になっただろ?」
「……バレバレだよね」
「すごいバレバレだった。多分萌太くんは崩子ちゃんに怒られただろうね」


ああそれ見てみたい、とあたしは小さく笑う。目の保養だよ、本当。


「零崎とは仲がいいみたいだね」
「あ……うん、まぁね…。喧嘩するほど仲がよかったかな」
「喧嘩って、まさかナイフで?大変仲がいいみたいだね友恵ちゃん。微笑ましいよ」
「微笑まないくせに、それに人識くんがナイフ出したらあたし死んでるからね」


無表情で言われると少しならず怒りを感じる。素早くツッコミ。なんだか満足そうに頷いたいーくんだった。


「怒鳴り合いやら物の投げ合いやら取っ組み合いやら……」
「…友恵ちゃんがあの殺人鬼と取っ組み合いが出来るほど強い子だったなんて知らなかったよ」
「殺人鬼が手を抜いてるに決まってるでしょ、何度も言うけどあたし殺されちゃうからね!」


つい声をあげてしまった。


「付き合いってどれくらいなんだ?」
「えっと……ついこの間、かな。フラフラしてるからさ、あたしに家があったから泊めてあげてたんだよね…」
「ああ、それで料理にケチつけられたんだ」
「そう、でも……暮らせなくなってね。こっちに来たんだけど………」


言葉を濁らせる。どうして暮らせなくなったとかは伏せた。全部話せたら楽だけど流石に主人公には言えない。


「それで零崎が行っちゃったわけか」
「……いーくん、捨てられたらどうしよう」
「最低だな、見つけ出して刺し殺したらどうかな?」
「うーん、そうするよ」
「迎えに来ると確信はできないのかい?」
「来ると思うけど、いつかは…どうかな…」
「迎えに来るとは思えるんだ」
「だって、連れてきたのはあの殺人鬼くんだよ?そこまでいい加減じゃないことを祈るよ…どう思う?《鏡》さん」
「そうだな…きっと来るよ。アイツはそうゆう奴だよ」
「いーくんは顔色一つ変えないで嘘つくねー」


全く戯言だ。あたしは笑って、いーくんは笑わなかった。


「どうして君は零崎と友達になったんだい?殺されかけたんだろ」
「それは君と同じだと思うよ。人識くんが殺さないから」
「まぁそれは納得いくとして、家に泊めたのはどうしてなんだ?普通しないだろ、殺人鬼だぜ?ぼくみたいに君が部屋の前で倒れてたわけじゃないんだろう」
「まーね。でもあんな可愛い顔した子をさ、公園に寝かせられないでしょ」
「友恵ちゃん、殺人鬼だって忘れてるよ」


忘れてないよ、とあたしは笑う。忘れてるね、といーくんは言った。


「アイツ、友恵ちゃんのヒモだったくせに友恵ちゃんを置いて何処いったんだろうね?」
「ヒモって…自分の鏡に失礼だよ、いーくん。多分、お兄さんを探しに行ったんだよ…そう言ってた気がする」
「お兄さん?アイツに兄がいたんだ」
「うん……遅く、なるとおもうよ…」


すごく、と小さく付け加える。自然と目が伏せた。
お兄さんを死なせたくないのに、無理かな。それが、引っ掛かる。
また、沈黙してしまった。

嗚呼、話題を続けなきゃと焦って探す。
「明日」といーくんから口を開いた。


「友恵ちゃんに会いたいって人がいるんだ、そいつに会ってほしい」
「あたしに?」
「玖渚っていう青い髪の女の子だよ。ちょっと変わってる奴だけど、いいよね」


……玖渚?玖渚友?
青色のサヴァンがあたしに会いたい!?

危うく絶句しかけた。


「えっと、その子にあたしのこと話したの?」
「うん。まずかったかな?別に隠すほどでもないだろう」


言ったのかよコイツ。
好意を寄せる女の子に女の子と同居してるって言ったのか。バカじゃないか!
怒鳴りたいのをぐぐっと堪える。


「あの…うん。じゃあ挨拶しに行かせてもらうよ」


あたし玖渚友ちゃんに殺されないだろうか…。
そもそも、あたしが存在しない人間だって調べられたらどうしよう。

あたし、ピンチじゃないか?


 


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あきゅろす。
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