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ソラゴトモノクロ
67


「ちゃーんと聞いたぜ、えーたん。両岸くんから一文字残らずえーたんの台詞をな。殺し屋は辞めていい、友達になろう、産まれた家なんて関係ない、理由を持ちなさい、愛して生きなさい。くくくっ、いいこと言うじゃねえか」


両岸くんはこの赤い人類最強に問い詰めて洗いざらい吐いたらしい。

「ああ、そうだ。竹河兄弟は約束を守ると言ったぜ、あたしにも約束したさ」

「……万事解決じゃないですか」

「おう、お前にどうなったかを話して今万事解決だ」

ぐうう…。
曖昧にしてくれないのか。鬼かこの人。
くしゃくしゃと頭を撫でられた。やっと解放されて、身体を起こす。
黙って髪を揃えていれば。

「ちゃんと約束守ったじゃん、えらいぞえーたん」

「…………あたしのせいで死んだのならあたしが殺したことになるのでは」

「この場合違うな。自殺を唆したり殺しを依頼したわけじゃないから違うぜ。それにしても、えーたんは本当に零崎と縁があるんだな」

殺したら《零崎》になる。
それは直接己の手で殺したら、だ。
約束は『零崎にならない』
《零崎かもしれない》あたし。
曖昧な零崎があたし。
零崎人識に恋したあたし。
零崎曲識に助けられたあたし。

「零崎恋識。お前、その性質を抜きにしても両岸くんはびびってたぜ。曲絃糸は一姫から教わって腕を上げたらしいな、ナイフでズタズタにされた時はまじで殺されると思ったってよ」

そこまで話したのか両岸。
人類最強にまじで洗いざらい吐いたのか。くそう。


「面白ぇ。えーたん、あたしと勝負しようぜ」


そう言った赤色はにやり。楽しげに口元をつり上げて笑った。
頭が理解できずポカーンとしてしまう。かろうじて「え?」と聞き返す。


「人識くんともまーまー、楽しめたしな。《零崎かもしれない》末恐ろしいえーたんの実力を知りてーから戦おうぜ」

「ごめんなさい。あたし狂戦士じゃないし戦う主人公でもないので無理です」

「手を抜いてやるからナイフで来い、受けてたつ」

「お断りします」

「じゃあ怪我治ったらな」


あれ、この人…あたしを殺害する計画を練っているのかな。なんかとてつもなく嫌です。

「よし、じゃああたしはこれで」
「え?もうですか?」
「次はいーたんに会わなきゃいけないんだ、仲直りしにな」
「……そうですか」
「じゃあまた会おうぜ、えーたん。大好き」
「はい、また。大好きです潤さん」

嵐のお帰りだ。潤さんは立ち上がって真っ直ぐ玄関に行った。
かと思えばピタリと止まってあたしを見下ろしてから「まるでいーたんの鏡だな」と言う。
ぎょっとする。

「あ、鏡は人識くんだったなー」

とまた背を向けた。

「鍵閉めねーと強盗はいるぞ」
「あ、近所の子が入るので鍵閉めなくていいです」

許可がないのにノックもしないで入ってくるのは強盗と潤さんだけだよ。


「あ」
「ん?」
「両岸くんと同岸くん、お前に惚れたらしいぞ。だからお前を殺そうとした貧相な男を殺したんだ」
「は?」
「えーたんはあれだな、巻き込んだ相手に好かれる体質だな。俺も愛してるぜ、友恵ちゃん」


ばたん。
潤さんは最後は人識くんの声で言って、部屋をあとにした。

………………………。
遺言まで両岸くんは吐いたらしい。畜生。
だからその声で愛してるはやめてくれ。

てか、は?なに?惚れた?ワッツ?んん?何かのクイズ?んんん?

首をこれでもかと捻っていれば、ノック音のあとに崩子ちゃんが部屋に入ってきた。

「あの赤い人は誰ですか?」
「人類最強。おかえり、崩子ちゃん」

ああ…あの人がですか、と崩子ちゃん。クールな反応だった。


 


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あきゅろす。
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