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ソラゴトモノクロ
65 赤色


「僕を庇ったのも愛ですか?友恵さん」

「そんな責めるように言わないでよ…君だって気付いたらそうしてたでしょ」

「そうです。本来なら僕が盾になるべきだったんですよ、それなのに庇われてこの僕の気持ちはわかりますか?」

「わかるよ、想像するだけでも気持ち悪い」

あたしはきっぱりと言った。

「本来ならあたしがそんな気持ちになることを、わかったでしょう」
「………………」
「この場合はとりあえず、ごめんと謝る。ごめんね、萌太くん。気分が悪くなったでしょう。ごめん」

自分を愛していない人間が、誰かに守られる。
その気持ち悪さを知っている。

壊れた人間である自分を守って傷つく人間がいる事実はこの上なく、気持ちが悪いのだ。

「ごめんね」とあたしはもう一度謝って萌太くんの頭を撫でる。

「……あの兄弟は諦めたと、思っているんですか?」
「懲りたっしょ。もし来たら人類最強に頼む」
「……………あの言葉はあの二人に、言ったものですか?」

俯いたままの萌太くんが静かに聞いた。あの言葉?どれだろう。
首を傾げていれば「なんでもありません」と萌太くんはにこっと笑った。


そのあと、包帯などを買いに行っていた崩子ちゃんと姫ちゃんが戻ってきて、あたしは二人に怒られた。

何故連絡をしなかったのか、怪我をしやがって、お姉さんのばか、今後こんなことをしたらただではおかない。と傷を叩かれて怒られた。


姫ちゃんは泣きそうな顔で崩子ちゃんは心底怒った顔で、怒る。

死にかけたわけじゃないのに。へっちゃらな怪我なのに。なんて言い訳を思う。

万事解決したと親指立てて笑えば、今度は信じてくれた。

心配をかけたお詫びに四人で遊びに行く約束をする。


一日中あたしを振り回したいそうなので怪我が治ったらということに決定。
姫ちゃんの提案で遊園地に行くことになった。遊園地で振り回されるのかにゃ。
まぁいいか。





翌日、赤い請負人があたしの元に来た。
崩子ちゃんと姫ちゃんの部屋に大人しくいたのだが、昼飯を買いに崩子ちゃんが出ていった直後。

鍵を閉めていないドアを開いて、シニカルの笑みで威風堂々入ってきた。


「よお。えーたん」
「…どうもです。潤さん」


何故か身構えた。何か嫌な予感がする。……何故だろう。

「姫っちに聞いたぜ。大変な目に遭ったらしいじゃねえか。えーたん」

上がり込んでどっかりとあたしの目の前に潤さんは座った。姫ちゃんから聞いたのか。竹河兄弟との衝突。

「詳しく聞いてやる、話せ。一姫には何か隠しているようだな」
「…………はい」

あたしは話した。
先ず臨時バイトを引き受けてコンビニのバイトをやって、ギャルと成り行きで映画館に行き、殺しを目撃したことを話した。竹河両岸と同岸から身を守ったが殺されかけたその時に零崎曲識が登場。
零崎曲識のことはちゃんと話しておいた。あたしが《零崎かもしれない》ことを知っているから話せる。
潤さんが曲識さんのことを知っているからこそ話せた。
二日目は呟いた言葉のせいで貧相な男に鋏を向けられたことも正直話す。曲識さんにまた助けられた。それから姫ちゃんに隠したかったが問い詰められたから話して、翌日バイト終了後に襲われたことまで話した。
その時に萌太くんが一緒だったことは言わない。二人の名前は伏せておくことにした。
ボロボロでも殺さずに説得しようとして失敗して殺されかけた時にずっといたらしい曲識さんがヒーローよろしく登場。完結。おっしまい。

「省きすぎだな、えーたん」

「そうですか?これでも詳しく簡潔に最悪な三日間をまとめて話したつもりです。三回命を狙われて三回曲識さんに助けられた。それだけっすよ」

「それが省きすぎなんだよ。その三日間に愛や友情、ドラマチックでロマンチックな展開を入れて話せ」

「捏造をしろと言うのですか」

省きすぎたことに文句言われた。仕方ないではないか。
誰が好き好んで人識くんの嘘まで言わなきゃいけないのだ。お断りします。


 


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