[携帯モード] [URL送信]

ソラゴトモノクロ
64 帰宅

「殺され役、刑事役、探偵役、犯人役、その他役。友恵ちゃんはどの役が一番やりたくない?」
「なんかの心理テスト?」
「いいからいいから」
「んー。刑事役と探偵役はごめんだね」
「へえ、なんで?」
「社会正義の社会が嫌いだし、探偵は犯人の犯した犯罪を批評するだけだもん」
「かははっ!批評家か、傑作だぁ」
「戯言だよ」








目を覚ましたら、人識くんがいた。とは好都合なことにはならず、人識くんではなくいーくんがあたしを見下ろしていた。

「…そんなあからさまに嫌な顔を見たって顔をするなよ」
「今度寝顔を見下ろしたらいーくんの寝顔を潤さんと友ちゃんに送ってやる」

あたしは起き上がった。姫ちゃんの部屋だ。


「おかえり。いーくん」
「ただいま。友恵ちゃん」


いーくんのご帰宅。
左腕はギブスがついているが、なんとか生きているようだ。いーくんも大変な旅行だったらしい。
痛みがするから自分の身体を見てみた。
右腕が包帯で包まれている。左股も手当てをされていた。
萌太くんがここまで運んでくれたのだろうか。


「いーくん、ボロボロだね」
「友恵ちゃんには劣るよ」
「君がいない間最悪だったよ」
「ぼくもだ。友恵ちゃんが一緒にいればぼくは怪我せずに済んだと思う」
「あたしが一緒に行っても君は怪我をしたんじゃないかな」
「不吉なこと言うね、友恵ちゃん」
「無為式発動であたし落ち込んでます、いーくん」
「慰めてあげるよ、ほらぼくの胸に飛び込んで」
「ズタズタにするですよう」
「友恵ちゃん、無為式の自覚をしたんだね」


友ちゃんに誘われるがままに一緒に行ってた方が良かったかもしれない。なんて戯言だよね。
自覚か。無為式。なるようにならない最悪。
うん。なるようにならなかったよなぁ。


「ねぇ、友恵ちゃん」

「なぁに、いーくん」

「愛は何か、教えてくれない?」


自分の部屋に帰ろうと立ち上がったいーくんがそんなことを言い出したのでポカーンとしてしまう。

「君は姫ちゃんにそうゆうことを教えてるんだろう」

あたしは少しいーくんの真意を考えたがわからなかったので笑って答えておいた。


「あたしは素晴らしさを教えているだけだよ。恋はするもの、愛は────守るものだよ、いーくん」

「……………そうか」


いーくんは「お大事に」と言ってドアへと向かった。ドアは既に開けられていて、萌太くんがいーくんと入れ違いに入る。
なんだかご機嫌斜めのご様子。

「萌太くんが運んでくれたの?」
「はい……」
「ありがとう。…どうかしたの?」

あたしの前に胡座をかいて萌太くんはわざとらしい溜め息を溢した。


「崩子にいびられたんです。何故友恵さんは血塗れで僕は無傷なのかって」
「そ、そんな…萌太くんだって怪我してるじゃん」
「こんなの怪我のうちに入りませんよ、あなたに比べたらね。零崎曲識のことは伏せて、万事解決したことを話しておきました。それでよかったですよね?」


零崎曲識のことは姫ちゃんと崩子ちゃんには話してない。大まかに省いて説明してくれたようだ。
うん。それでいい。
万事解決だ。うん。
あたしは頷いた。


「愛は……守るもの、ですか」


萌太くんが呟く。よく盗み聞きするなぁこの子ったら。


 


[次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!