ソラゴトモノクロ
56 二日目終了
「じゃあ、三人とも殺しをやらない。いい?」
三人はそれぞれ頷いた。
「それから死ぬことは許しません」
少し遅れて三人は頷く。
「あたしが逃げろと言ったら逃げなさい」
「…………」
「…………」
「…………」
「頷かないなら荷物をまとめます」
「実家に帰らないでください、友恵」
「ここでボケるか、萌くん」
「不謹慎ですよー二人とも」
「まぁいいでしょう。こんな気まずいのをいつまでもできまないよ、チキンハートなんだってあたし」
「人間の心臓を移植したらどうですか」
「グサリときたよ、崩子ちゃん」
ガラリと空気が変わって、肩がずしりと重く感じる。もう、諦めが感じか。あたしは一息ついた。
「では、友恵姉さん。わたし達がお守りする方向でいいですね?」
「はい。守るって守備だよね?護衛だけだよね」
「はい。基本的には友恵姉さんを一人にしないようにわたし、萌太、姫姉さまがお側にいる方が安全でしょう。それより友恵姉さんにはいい案があるのですか?」
「いや…いいと思うけどね。……崩子ちゃんは何もできないでしょう?」
「……………」
早速といった感じに崩子ちゃんが仕切ったがあたしは言いづらかった言う。
《闇口》である崩子ちゃんは《主人》がいない今、殺傷能力が使えないはず。
「こうしよう、崩子ちゃん。あたしはそんなに出掛けない。明日は最後の臨時バイトで萌太くんと一緒だからさ、それ以外は一緒にいよう。姫ちゃんは学校があるし、萌太くんも仕事がある。一緒に部屋にこもっていよう。これならな安全」
わたしは足手まといかと怒り出す前にあたしは言う。そうすれば崩子ちゃんはきょとんとした。
「萌太と……仕事が一緒なんですか?」
思いもしない方に話がずれる。
「あれ?聞いてないの?」
「聞いてません」
あたしと崩子ちゃんは萌太くんに目を向けたが、彼はわざとらしく余所を向いていた。
何故崩子ちゃんに黙っていたのだろうか。
「明日は……萌太が側にいる、ということですね」
「えー姉。行くのやめたらどうですか?バイト」
「引き受けたのに断れないよ。明日で最後だから」
「じゃあ姫ちゃん学校休んで手伝うです」
「だめだよ、いーくんが払ってるのに学校行かないなんてだめ。姫ちゃんは学校にいきなさい」
「んぎゃー。あ、そう言えばその師匠から電話がありました」
「え?そうなの?」
「着信履歴にありませんか?えー姉にも電話したとか言ってましたよ」
「あ、非通知のがあったな」
「それですですよ。なんだかいつも以上に変でした。無事に帰って来れなかったらえー姉に部屋をあげるそうです」
「あー、いーくんも大変なことになってるんだね。あたしはいーくんみたいに事故の連続に遭いたくないな」
「今回がその事故ですよね」
「うっ」
「えー姉。師匠の物は半分こしましょうよ」
「え?貰うの決定なの?」
「いー兄亡くなりましたか、残念ですね」
「こらこら、生きて帰ってくるよ」
「崩子は悲しいです」
「崩子ちゃん悪ノリしない!」
「師匠、財産いくらでしょうね」
「姫ちゃん!」
《まぁまぁな二日目、終了》
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