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ソラゴトモノクロ
03 崩子ちゃん




「戯言なんだけどなぁ」


なんとかバイトで身に付けた腕でいーくんやまたにみいこさんに食事を作った。

みいこさんは凛々しくて優しいおねぇさんで、凄く良くしてくれる。
2日経った。
いーくんは凄く不便みたいだけどあたしがいるから助かるって。あたしがいなくてもちょっと不自由だけで一人でも生活できただろうね。多分、戯言だ。

みいこさんに服を借りて着たがちょっとサイズが合わない。
今度買いにいこうと言われたのだが流石にそれは、と苦笑して曖昧にさせておいた。

カバンがあるだけ良かったけど(財布もあり)生活の足しにはならないだろう。
ちょっと溜め息。

いーくんはずっとこもっている。あたしは考え事をするとまた《死んだ目》を見られるから、散歩にいくと言って出た。

散歩と言っても迷うから止めて、階段に腰を下ろして思いに耽ることにする。


人識くん。大丈夫だろうか。
お兄さんを探しに行ったと思うけど、原作通りなら、お兄さんは死に、哀川潤さんと衝突するはすだ。

そのあとにあたしを迎えに来てくれるのだろうか。

否、もっと数ヶ月後かもしれない。

そもそもあたしは、じっとしていていいのだろうか。

なんで一人で決めちゃったんだ、人識のバカ。
あたしが、手助けして、お兄さんを、死ぬ命を助けるべきなんじゃないのか。


そしたら…──。


そしたら、なんだろう。


どうなっちゃうんだろうか。


結局は、戯言にしかならないんだよな…。


呟いてまた溜め息を吐いた。


 ふと、視線に気付く。
女の子が不思議そうにあたしを見ていた。黒いボブに白のワンピースの美少女。
なんて可愛い娘なんだろう。

どきっとしつつもあたしは立ち上がってその美少女と同じ地面に足をつけた。


「どうも、こんにちは」
「…こんにちは、おねぇさん」


声をかければ頭を下げて美少女は挨拶を返してくれる。白い肌。綺麗だな。


「あたし、友恵です。訳あって戯言遣いのいーくんの部屋に居候することになりました。よろしくお願いしてもいいかな?」
「わたしは闇口崩子です。よろしくお願いします」


怪しまれず美少女の崩子ちゃんが名乗ってくれたが「戯言遣いのお兄ちゃんの部屋、ですか」と疑問に思ったようで首を傾ける。


「お兄ちゃんの恋人さんですか?」
「いや、違うんだ。いーくんの友達があたしの友達でね、他に行く場所がないから頼み込んで居候してるの」


先ずは恋人説をぶった切っておく。そんな誤解は直ぐに解くべし。


「そうですか。わたしは兄の萌太とその部屋で暮らしています。年頃の男と女が一緒の部屋に泊まると色々、大丈夫ですか?」
「え?あ…ははっ。やだな。大丈夫だよ、崩子ちゃん。いーくん怪我してるし」
「男は獣だと、魔女のお姉さんが言ってました。何かされたら助けを呼ぶといいですよ、すぐ駆けつけますから」


13歳の女の子ととんでもないこと話していないか、あたし。顔がひきつってしまう。
「今いーくん怪我してるから…。治ったらみいこさんの部屋に泊まっていいと許可もらってるから大丈夫だよ」と言っておく。
「そうですか」と崩子ちゃんは綺麗な微笑で頷いた。
とても可愛い娘だ。


 


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