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ソラゴトモノクロ
42 地獄の三日間


なんだかんだ慣れれば何とかなるらしく姫ちゃんとの半同居生活は仲良くできた。
姫ちゃんは高校も上手くやっているらしく、友達を紹介してくれた。あたしといーくんに紹介。
目的はあたしに恋愛相談してほしいとのことだった。
別にあたしは恋愛の達人ではないのにな。恋愛豊富と言うわけでもないのに。
致し方なく聞くだけ聞いて客観的にどうすればいいかを話してやった。女子高生のテンションに合わせるのは苦だった。
年齢が変わらないのは悲しい話だ。




「ふぅ……」
「お疲れですか?」
「うにゃ!?」


夜は部屋から抜け出して、一息つけば萌太くんに後ろから声をかけてきた。思わず奇声を上げる。
毎度のことで笑うだけで萌太くんは隣に立つ。
「あは…こんばんわ、萌太くん」とりあえず挨拶をする。
「こんばんわ」相も変わらない美少年の笑みで返事が返ってきた。


「友恵さん」
「うん?」
「どうして晴れた日の夜にはいつも夜空を見上げているのですか?」


萌太くんは今まで疑問に思っていたらしく訊いてきた。
「好きだからだよ」とあたしは平然と何も考えずに答える。

「好きだから……観る、のですか?」

萌太くんは追及するように訊いてきた。

「観測というか…見つめる、かな」

あたしは星から萌太くんに目を戻し、本当は何が訊きたいのかを待つ。暫く無言だった萌太くんは漸く言いたかったことを口にした。


「僕には友恵さんが星さえも見ずに悩んでいるようにしか見えないのですが」


と、そう言う。


「何を悩んでいるかは知りませんが……僕はね、友恵さん」


真っ直ぐに向かい合って、萌太くんは何かを言いかけた。
その時に上の階でドアが閉まる音がして二人で上を向く。やがて出てきたみいこさんが階段を降りてこちらにやってきた。


「猫の友。悪いが頼まれてくれないか?」


おや。みいこさんが頼み事なんて珍しい。あたしは萌太くんの話をすっかり忘れてみいこさんの前に立った。
「なんです?」と先ずは内容を聞くことにする。


バイトをやらないかとのことだった。今みいこさんが働いているバイト先の同僚から頼みで、とある店で3日臨時で働いてほしいとのことだ。
なんともウィルス感染で人手が足りないという。だから臨時が必要でみいこさんは頼まれたのだが、みいこさんはその日用事があり引き受けられない。だからあたしに頼んできたのだ。
その日は面白いことにいーくんがマッドデーモンだとかいう博士に会いに行く日だった。
友ちゃんは何故か必要以上にあたしを誘ってきて断っても諦めないのだ。いーくん曰く明日も説得するつもりらしい。
臨時バイトを引き受けるのは友ちゃんから逃げる言い訳になる。
だからあたしは事情を聞いただけで頷いた。


「喜んで引き受けます、みいこさん」
「応。ありがとう、仔猫。礼は弾むぞ」
「いえいえ、礼はバイト代で十分ですから。丁度お金が欲しいと思っていたので」
「あの」


そこで黙って話を聞いていた萌太くんが口を開いた。


「そのバイト。僕も引き受けても構いませんか?」


控え目な言葉だったが、笑顔はやらせてくれと言わんばかりの清々しさだった。

こうしてあたしは萌太くんと臨時バイトを引き受けることになったのだが。



あたしは、いーくんがいない間の三日間が─────地獄になるとは思いもしなかった。







いつだったか。

あたしはきっと。人識くんとは恋は実らないだろうと思ったことがあった。

どうしても、踏み入れない隙間があったのだ。

どうしても口を開いてくれないある人物がいたのだ。

匂宮出夢。

彼女、否《彼》には敵わないと思った。
何をしたってどんなことしたって敵わないと、理解している。
あたしが理解できないことが二人を結んでいることを理解しているつもりだ。

二人が再会することは原作には無い。ないのだがあたしは、再会して欲しいと思う。
好きとは、嫉妬することでもあるが、勿論嫉妬はしているがそれでも、あたしは人識くんが幸せになるならば別に失恋しようが構わない。
出夢くんと仲直りすることをあたしは願う。

そこまで。
そんな願いを持っているなんて。誰も知らないだろう。
あたしは誰にも話していないのだから。

話してみようか。

寧ろ再会出来るようにシナリオを還付なきまで狂わせようか。
一人の殺人鬼の為に。
一人の殺人鬼の幸せの為に。
他の誰かが被害を受けても構わない。


「……戯言だけど」


誰にも聞こえないように洩らす。
あたしはこの臨時バイトを引き受けたことを早速、後悔した。
接客の仕事はまぁいいとしよう。コンビニなのだから。
あたしが嫌なのは。一緒に働くギャル女だ。


 


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あきゅろす。
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