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ソラゴトモノクロ
107 相談

「友恵ちゃん。親友何人いる?」
「先日からいない」
「じゃあ、俺達親友にならないか?かはは、なんつって」
「冗談抜きでなろう、親友」




親友とは何か。親しい友人に決まっている。はたして、どれくらい親しければ、親友と呼べるのだろうか。

ずっと変わらず友人で居る関係。裏切らない友人。何でも理解し合える仲。全てをわけあえる程のじゃれあいをする──なんて戯言だろう。


「あーんっ!残念!僕様ちゃんとの電話の直後にそんなイベントが起きたなんて!えーちゃんたらっ!電話を切らずにしてほしかったよ!聴きたかった!てか録音したかった!」
「いや、しないでほしい」


聴くことも録音することも。
もしかしたらあたしは相談した相手を間違えたかもしれない。

城咲の友ちゃんのマンション。エアコンが効いていて実は涼みに来たのが目的だったりする。相談はついで。と言ったら過言か。

萌太くんについてはかなり、悩んでしまっている状況。関係を持続したいから傷付けることは言えない。断っているのに萌太くんは諦める様子はない。


「だから言ったじゃーん!えーちゃんは愛され肌なんだって!」


きゃはきゃはっ、と友ちゃんは嬉しそうにはしゃぐ。


「愛され肌って………友ちゃん。それは違うよ…」
「僕様ちゃんは愛してるよ。えーちゃんの魅力にビンビンだよ!ラブビームの効果抜群!」
「意味わからない……」


前々からなんだろう。どうして魅惑な声だとか愛されだとかそういうことを言うのだ。
どこの愛されヒロインだよ。違う。あたしはそんなキャラとは違う。
この世界での愛されキャラは、友ちゃんや崩子ちゃんだ。目の前の友ちゃんを見るが、うん、違う、まるっきり違う。


「萌太くんはただ……………なんであたしを好きになったんだろう」


謎だ。いつからだ。何が萌太くんの心を揺らしたんだろう。


「出会った瞬間から」
「一目惚れしたようには見えませんでした」
「うっそだあー、えーちゃん鈍感でしょー。えーちゃんを一目見たらみーんな気になっちゃうんだよ!僕様ちゃん心奪われたもん!」


大袈裟すぎて笑えない。今現状だからこそ笑えない。
友ちゃん、まじで悩んでるんだよ。解決したいのだ。


「いいじゃん、浮気の一つや二つ」
「女の子がそんなこと言っちゃったら男の子はイタリア人並に浮気をしちゃうよ!」
「ひーくんは?浮気はどこまでなら許してくれるの?」
「いや、ひーくんとは付き合ってないから……」


ひーくん、つまりあたしの本命である人識くん。
「僕様ちゃんならちゅーまでだね!」という友ちゃん。実は人識くんとも、萌太くんともちゅーしましたなんて言ってなかったり。
されたら浮気の内に入るのかな…。


「えーちゃんは、その萌太くんを嫌いじゃないんでしょ?」
「うん、ぶっちゃけタイプ。人識くんと会ったときめきを感じたりしてますが…やっぱり萌太くんは弟、みたいなんだよね。人識くんしか見れないよ」
「えーちゃん、一筋だもんね。可愛い!浮気したら許さないタイプでしょー?」
「浮気は裏切りでしょ。やだもん。二股とか無理。やれる人の神経が信じられない」


更にぶっちゃければ浮気というワードはあたしのトラウマだったりする。それは言ったりしないけどね。


「じゃあひーくんが迎えに来るまでの期限限定」
「友さん!相手は十五歳!少年です!そんなピュアな少年のハートをもてあそべと言うのですか!?」
「えーちゃんがピュアだから無理かー」


にこにこーっ、と可愛い笑顔で何てことを言うんだろう。見た目に反して十九歳。


「やったね!年下の彼氏だ!おめでとう!」
「あたしを泣かせたいのかな!?」


友ちゃんに大いに遊ばれるあたし。ずーん、みたいな。


「えーちゃんが断ってるなら、そのままでいいじゃん?」


友ちゃんのコップが空になったのでジュースを淹れれば、やっと真面目な返答をくれた。

「えーちゃんは付き合わないって断っても、萌太くんがアプローチし続けるならそのままでいいと思うよ。えーちゃんは変わらず弟扱いをすればいいんだよ、それでもアプローチを続けてえーちゃんの心が変わるのを萌太くんは待ってるんだからさ」

人識くんに向けられたあたしの心が、自分にくるのを待つ。
あたしとは違うんだ。
あたしは待つつもりも、変わると期待してもいない。

「一生……変わらないのにな…」

それでもあたしは想い続ける。


 


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あきゅろす。
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