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ソラゴトモノクロ
106 恋に落ちそう



「…………………」


気まずい空気。
萌太くんと崩子ちゃんの部屋で萌太くんと二人きりになっていてかなり気まずい。

何故こうなったのかはわからない。

お酒を飲んだ途中からの記憶は朧で、起きたら翌朝だった。記憶を飛ばすほど飲んだなんて初だ。
汗で身体が気持ち悪かったので朝風呂に行き、帰ってきたらやけに機嫌が悪いいーくんに崩子ちゃんからビデオ鑑賞をしようとの伝言を受け取ったので向かったら、萌太くんがいて崩子ちゃんはちょっと待てと言い残したきり戻ってこない。


き、気まずい。


壁際に座ったままテレビの方を向いたまま沈黙。挨拶をしたきり目すらあっていない現状。

逃げたかった…。
いや、に、逃げないもん。

逃げないから。逃げちゃだめなんだから。逃げたら、人識くんみたいじゃないか。出夢くんみたいじゃないか。

だいたい、告白されたからって逃げるなんておかしい。
好きだと言ってくれたんだよ。嬉しいではないですか。

好きだと伝えることが大切だと教えたことを覚えててくれたんだ。嬉しいではないか。

なのに、逃げるなんて、それは最低だ。

ちゃんと向き合おう。

あたしはあの出夢くんとだって向かい合って戦って生き残ったんだ。

扇子をパタパタ扇ぎながら、深呼吸。怪我を隠すため長い手袋をしているので暑い。
勇気を出してあたしは口火を切る。


「萌太くん」
「はい」


寛いだ様子で座っていた萌太くんは身体ごとあたしに向けた。チキンハートがどくどくどくと高鳴る。必死に落ち着かせ、もう一度深呼吸。


「あの…ありがとう」


直視は流石に無理が一度眼を逸らす。が、がんばれ自分!

「好きだって、言って……くれて、ありがとう」

精一杯言ってそれから萌太くんに眼を戻す。萌太くんは眼を合わせてからフッと微笑んだ。


「では僕と付き合いませんか?友恵さん」


その言葉に反応が遅れる。
きょとんとしてから、それから──ボンッと爆発的に顔が熱くなった。


「えっ、えっ!?」
「年下はだめですか?恋人になりましょう、友恵さん」
「ええっ!?」


萌太くんはあたしの反応が可笑しかったのかクスクス笑いながら身を乗り出して近寄ってきた。


「ご、ごめんっ萌太くん、それは…。あたしは萌太くんをそうゆう風には見れないんだ…弟、ていうか。だ、だめかな?今までの関係じゃあ……ぅっ」


思わず後退りしたが背後には壁。萌太くんはあっという間に目の前に来た。

初経験だからどうすればいいかわからないから大いに混乱。

え、ええっえっ!?

「んー」と萌太くんはあたしの目の前で首を傾け考える素振りをした。

「………っ」

萌太くんの腕が伸び壁に手をついて、あたしを閉じ込めた。思わず身体を強張らせる。


「弟にしか見れない、のならば弟以上に見れるようにすればいいんですよね?」
「え……へっ?」


にっこり、と笑顔で萌太くんが顔を近付いてきたので、ぴんっと背中を伸ばして壁に貼り付ける。

近い、近いよ!

「も、萌太くん…近いっ」とあたしはこれ以上近付かないように肩を掴んで止めたが萌太くんは笑ってる。

かと思えば、ぐりんっ。
いきなり視界が変わった。わけわからずポカーン。視界には天井──と、萌太くんの微笑。
────萌太くんに押し倒された。


「友恵さんだって彼のことを想い続けるのなら、僕だって想い続けても構いませんよね?」
「……あの、萌太くん…?なにを…?」
「弟がしないこと」


…………ん?ぅんっ!?

萌太くんが押し倒して、両手を押さえられ、見下ろされて…。チキンハートが爆発寸前!


「してもいいですか?友恵さん」
「なっ…」


見つめて微笑みかけて顔を近付けようとする萌太くん。叫びかけそうになったその時、萌太くんが離れた。

ガチャ、とドアが開き崩子ちゃんと姫ちゃんが入る。
た、助かった…。


「ではでは、ビデオ鑑賞しましょうですー!」
「姫ちゃん、勉強は?」
「あとでですよー!」


起き上がって姫ちゃんに言う。よかった。怪我には気付かれてない。


ほっとして元の位置に戻った萌太くんを見れば、べっと舌を出していた。

ドクンドクンドクンドクン。
鼓動が高鳴る。胸の中に熱を感じた。

やばい。やばい。久しぶりの鼓動が、やばすぎる。こうゆうのは本当にだめだ。


────…恋に落ちそう



 


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