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楽しむ黒猫
070




「ひー…ひぃー……ふぅ…死ぬかと思った……はうー」


息を吐く彼女を見る。
ふと思い出した。


「ねぇ、例の同人誌はちゃんと捨てたの?」

………………うん

「その間は何」


腐れ発言した遊姫に捨てろと命じたのに、どうやら捨ててないみたい。

にんまり笑顔を向ける彼女を無視して僕は彼女の本棚に向かって処分しようとした。


「Σやめて!お願い!勘弁してください!」

やだ。そんな目で見られると不愉快だ」

「見てない見てない!!」


彼女は僕の腕を抱き締めて激しく首を振った。


「素敵な絵が描いてあるの、捨てられないの」

「実物大で我慢できないの」

「あー、それを言われると困りますが職業柄、絵は命と言うか」

今咬み殺すから、安心して


職業柄って自称漫画家の卵でしょ
命であるその絵を咬み殺してあげよう


何でもしますから!勘弁してください!


僕は振り返った。

…何でも?

振り返れば間近にある彼女の顔。


「何でも?」

「何でも一つ言うこと聞きますから!」


うんうん、唸る彼女。
お願いと見上げてくる遊姫の唇を見てしまう…


じゃあ…キスさせて


気軽に、冗談に、言えば良かった。

だけど喉からすんなり出てこなかった。
噛み付いてしまいたい衝動に負けずに、答える。


…じゃあ高い場所に連れてってよ

「……高い場所?」


彼女はキョトンとして考えた。
僕の腕を片腕で掴みながら彼女は唇に指を当てて考えてからニコリと笑みを浮かべる。


「いいよ、不法侵入しましょ」



悪戯な笑顔を浮かべた彼女が言った“不法侵入”がやけに頭に引っ掛かった。


…ふほう…しんにゅ……





 


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