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楽しむ黒猫
068 無意識に辿り着いた先






昨日ソファに座っていたら見付けた。
鍵を持ってるのは彼女ぐらい。

ましてや今日隣に座っていたのは彼女ぐらいだった。


彼女の家の鍵、か。


慣れない寝息がする部屋。


こんな世界に来てからイライラばかりする。並盛に帰るまで彼らと同居生活しなきゃいけない。


めんどくさい。
煩い。苛々する。


僕は溜め息を吐いて、家を出た。


起きていた六道骸が何か言ってたみたいだけど無視。


夜に群がる不良を咬み殺しに出てきたつもりだったのに


一度来た彼女のアパートの前にいつの間にか来ていた。



無意識に彼女を求めていた



音を立てずに鍵を開けて中に侵入。


彼女の家族も寝ている。
ここも寝息で溢れてる。

この前寝転んだベッドを覗けば、遊姫がいた。


二段ベッドを一人占領して広々と横たわって眠っている。


ムカつくな。
こっちは眠れないのに。


咬み殺そうとベッドに乗ると揺れた。彼女が寝返りを打てばまた揺れる。


天井に頭をぶつけないように彼女の元にいく。
上によつんばになっても彼女は気付かず眠っている。


枕の横にある黒いケイタイで時間を確認すると深夜の3時。


「んにゃ」


起きるはずもないか。

咬み殺すのを止めて、僕は彼女の隣に横たわった。

丁度彼女の腕の上。


そうすれば彼女は僕にすがりついた。


両腕が首に巻き付く。
必然的に彼女の顔は近くなる。


なんて無防備すぎる姿。


顎を上げれば、唇は触れる…


触れたい。


そんな衝動に駆られた。
嗚呼めちゃくちゃにしてやりたい。


だけど何かがブレーキをかける。


ただ、今はこの胸の中で眠りたいと思った。


彼女に触れると…
落ち着ける。



きっと彼女特有の雰囲気のせい


同居生活の苛々も、彼女が取り除いてしまう
だからここまで我慢できたに違いない。


変な猫…


最初から、君は可笑しい人だと思っていた。


変な人、可笑しな猫。



そんな猫の腕に寝る僕はどうかしてる……けどね




やっと眠りについて、気持ちよく眠っていれば目の前に寝息じゃない呼吸が聴こえた。


彼女が起きたみたい。


「…煩い」

「………何も言ってないけど」


お互い寝起きでちゃんとした声にはなっていない。
もっと驚くかと思ったのに遊姫は至って冷静な様子だった。


つまらないな


そう思って僕は鍵を返して背を向けた。


「届けにきてくれたんですか」


…違う


僕の頭の下にある自分の腕を彼女は抜き取って起き上がった。

ベッドから降りたから僕も追う。


「シャワー浴びるので待っててください」

「君朝にシャワー浴びるの?」

「うん」


畳の茶の間に腰掛ければ、彼女は背伸びをした。

そのまま腕を上げた彼女は少し考え事をしてからクルリと方向を変えてキッチンに向かう。


「玉子焼きでいいですよね」

「…うん」


僕の朝食を用意してくれるらしい。
お風呂上がりにお腹空いたって言おうと思ったのに…まぁいいか。


便利だな。


 


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