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楽しむ黒猫
48 ぬくもり



「手伝いますよ」

「ん、いいのいいの」


濡れた廊下を椿は拭いた。


それからお皿を片付け、今度は骸に手伝ってもらう。


「ね、ね、骸君と綱吉君の間にいれて」


布団を敷いて椿は聞いた。


「雑魚寝だわーい」


承諾を得て椿ははしゃいで白い布団に寝転んだ。


「ガキか」

「トランプやろー」

「おい!」

「ババ抜き!勝者にはぁ〜…なんか明日買ってあげるよ!」


寝るまでトランプ遊びをした。






   ザァアアア


一同が布団に横たわり目を閉じれば、雨の音は雑音のように聴こえた。


まとわりつくしつこい音に眠れない骸は寝返りを打つ。


目線の先には、背を向けた椿がいる。


椿がいる。


触れられなかった違和感がまだ手に残っていた。

骸はその手で椿に触れる。


脇に手を乗せれば


椿は寝返りを打って丸い瞳で見てきた。


ドキリと心臓が跳ねる。


てっきり眠っていると思っていたのにバッチリ起きていた。


不思議そうに見つめてきた瞳は次第に眠そうに細められる。


「どした…」


眠気たっぷりな声に吹き出しそうになった。


眠ればいいものの…


なんでもない、と笑みを向ければトロンとした瞳のまま見つめてきた。


そっと頭を撫でれば目を閉じる。


おや、撫でられて眠るなんて君は小動物ですか?


笑いを堪えて頬を撫でれば掴まれ退かされた。


彼女は僕の手を握ったまま眠ったようだ。

温かい手…


そっと彼女に寄り添ってみる。


不思議な雰囲気に安堵を感じた。
聴こえる規則正しい寝息が雨音を掻き消す。

もう少し耳をすませば鼓動も聴こえそうだ。


彼女の掌に鼻を擦り付ければ甘い香りが肌から匂った。


 


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あきゅろす。
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