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楽しむ黒猫
026 楽しい



アパートから真っ直ぐ住宅地を歩いてゆく。


「どこまでいくの?椿ちゃん」

「うん、知らないとこまで行こうかなぁって」


つまりプランはなし。
何となくそんな気がした。


「あ、公園でも行こうか。ちょっと大きい公園があるよ」


それならと綱吉は頷いた。
曲がり角を曲がって緩い坂を降る。

信号を渡り、急な坂の隣の道を歩けば公園にたどり着いた。


   ト ン


中に入ってすぐ野球ボールが椿の足元に転がってきた。

小さな男の子が親とキャッチボールをしている。

椿は親の方に投げ渡した。


(……山本、大丈夫かな)


野球ボールを見て思い出した綱吉は友人を思い浮かべた。
彼が来ていればきっと爽やかに笑っているだろう。

いつだってどんな時だって笑うそんな人だ。


「山本君が心配?」

「え!?」


ボケッとしていれば椿に図星をつかれ綱吉は聞かれて震え上がった。


「山本君…今頃修業中かしら?」

「えっ……あ…そうかも」


ヴァリアーとの戦いに向けて修業中に違いない。


「…もう3日……」

「……」


椿はじっと綱吉を見つめた。


「大丈夫だよ、ちゃんと戻れるって。君の世界はちゃんと原作通りに進むよ」

「どうでしょうか。原作とは違う現象が起きている時点で変わってしまっている」


ベンチに腰掛けて骸が口を挟む。
綱吉を撫でていた椿は困って目を細めた。


「確かにちょこっと違うけど………大丈夫だって、ボンゴレリングは君達を見捨てない」


確信はないが、椿は綱吉の頭を撫でて微笑んだ。


「そのリング偉大!超凄いから!期待しなよ!」


きっとリングさえあれば大丈夫だと勇気づけた。


「よし、トレーニングでツナ君とごっきゅんはダッシュ!」

「Σえぇ!?」

「Σごっきゅんってオレか!?」


ビシッと人差し指を向ける椿は強制的に走らせた。


「ヴァリアーに勝ちたいだろー!」

「「…おー……」」


とことこ、獄寺と綱吉はゆっくり走った。

基礎体力が落とさないようにしなくては。


椿は二人を見守って骸の隣に腰掛けた。


「骸君は修業しなくていいの?」

「……必要ありませんね」


骸は少し椿の横顔を見つめたが逸らしてから答えた。


「骸さん、リングは?」

「…………僕は持っていなかったはずなのに、何故かあるんですよね」


骸はポケットから掛けた指を椿にこっそり見せた。


「………きっと、ボンゴレ関係じゃないですか?このトリップ」


あるはずのない指輪があり、あのボンゴレのエンブレムがある。

何らかしらの関わりがある。


「……フフ、なんか楽しい」

「おや…貴女は楽しむ気ですか?」

「だってなんか……」


  楽しそうじゃない



そう椿は愉快そうに笑う。



彼女はまるで運命の糸を爪で掴まえた猫のよう…

運命を操っているのは神ではなく、彼女なのかもしれないと思った




 


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あきゅろす。
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