楽しむ黒猫 019 「え!?え!?いいの!?」 綱吉は何度も振り返った。 「大丈夫だよ、夕飯のためにきっと大人しくしてくれるさ!」 「……椿ちゃんは大丈夫?」 頭…と綱吉は指差した。 多少たんこぶできたぐらいだろう。平気だ、と椿は笑い飛ばした。 「でもす、すごいね!なんか椿ちゃん負けてなかった!」 「負けちゃうよ〜トンファーだったら頭割れてたよ。でもなんか胸ぐら掴まれてカチンときたの」 「売られたケンカは買うタイプ…ι?」 「やだなぁあたし超学校では大人しく子だよ、優等生よ☆」 てへっとわざと明るく笑ってみせたら綱吉が信じていない顔をした。 どことなく嘘っぽいと直感したのか。 「……」 「……」 「……」 「……」 急に会話がなくなり気まずい空気となった。 (耐えろオレ!あの三人といるよりましだよ!!) 今頃あの家では口論か重い沈黙しかないはずだ。 綱吉は必死に耐えて椿の隣を歩いた。 「…探し物はなんですか」 「え?」 「ボンゴレのファミリーですよ」 「は?」 「ボンゴレボスの沢田綱吉、僕と契約してみませんかぁ♪クッフッフー♪」 「Σいきなりなにぃい!?」 歌い出した椿に内容がそれだけで青ざめて震え上がる綱吉。 「はは、“僕と契約しませんか”あたし特製の替え歌だよ」 原曲はわからないんだけど、と椿は上機嫌に笑った。 「黒曜編のオープニングにピッタリよね」 「やだよ!!最悪だから!!つうか怖いから!!」 鳥肌が立った綱吉は激しく首を振った。椿は愉快そうに笑うだけ。 「いや〜本人の前で歌うって貴重ね♪」 (もう聴きたくない!!) 椿はアニメの話をしてキャラソンの話までして綱吉を震え上がらせた。 「沢田君、沢田君。明日のご飯は何がいい?」 「えっと……」 「朝は魚でいいかな、沢田君以外料理ましな奴しらなそーなんだよね」 とりあえず雲雀は和食かハンバーグと言うだろう。 獄寺はお坊っちゃまのくせに放浪していたし骸はなんでもいいと言いそうだ。 「んー……」 初心者でも作れるお手頃な料理を綱吉は首を捻って考えた。 「肉じゃが、カレー、シチュー……」 「あたしカレー嫌いなのよね」 「え、あ…ごめん」 「まぁいっか、あたし食べないから!」 椿はシチューやカレーをカゴにいれた。 今夜のおかずも忘れずにいれる。 「…あの、椿ちゃん」 「ん?」 「……苗字で呼ぶの…やめない?なんか…他人行儀みたいだし…」 おずおずと綱吉は言った。 「だって他人だもの」 グサリと当たり前のように椿に言われてショックを受ける綱吉。 「うそうそ。世話してるのに他人なわけないじゃん。じゃあ綱吉君!」 「椿ちゃん…!ツナでもいいからね!」 「うん!ツナ君可愛いなぁ!君みたいな弟ほしかったぁ」 「うわわっ///!!」 首に腕を回して抱きつかれて真っ赤になる綱吉は必死にもがいた。 「椿ちゃん…所謂姉御肌…?」 「そうかな?」 (やっぱりこの人すごい…) よくわからない椿のすごさを感じる綱吉だった。 よくわからないがすごいと思う。 だって 不思議なかんじがするんだもん [*前へ][次へ#] |