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楽しむ黒猫
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習慣通りの時間に目が覚めた。

椿はソファー。その下に綱吉と獄寺。その隣に骸。その奥の寝室に雲雀が布団を敷いて眠っていた。

綱吉を踏まないように寝起きの身体でソファーから降りて、洗面所に向かい歯磨きをする。


しゃこしゃこ。
歯を磨きながら髪を整えていれば。


「おはようございます」

「!!」


骸が来た。
挨拶をして歯ブラシに手を伸ばす。

完全に半径一メートル以内だ。


「同じ部屋に暮らしているのだから、仕方ないでしょう?歯磨きをしにきた僕を追い出しますか?」

「うっ…」


確かに。
同じ部屋に住んでいるのに半径一メートル以上離れて生活するなど無茶な話だ。


骸も歯磨きを始めた。
椿は警戒しつつも骸からできる限り距離を取る。

洗面所の鏡を見つめていれば、視線に気づく。


鏡に映る骸と目があった。


ただ骸は鏡越しに見つめてくる。


その視線に堪えきれなくなり、椿はキッチンで口を濯いだ。


(…………どうしよう…)


一晩越したが、これからどうすればいいんだ。


この共同生活がいよいよ辛くなってきた。


気まずい。

果てしなく気まずい。


椿はキッチンで俯いた。


(…何故こうなった…っ!!)


原因解明より、この現状を打破する作戦を練らなくてはいけない。


(……あぁ……泣きたいぜ…)


朝食は綱吉と獄寺に挟まれた。

骸と雲雀の視線を無視して椿は朝食を済ませる。


食器の片付けば進んで綱吉がやってくれた。


洗濯は獄寺と綱吉と三人でやり、接近禁止命令の出ている骸は大人しく座ってテレビを見て雲雀はフラッといなくなった。


ベランダで一息つく。


「何かあったのかよ?」


獄寺が加えた煙草に火をつけながら訊いた。
ベランダは開いたままのため、聞き取った骸が目を向ける。
その視線を感じ取りつつ椿は乾いた笑いを漏らした。


「健全な君達は知らなくてもいいんだよ」

「?」

「は?なんだ、そりゃ」

「いいんだよ、少年達よ」

「わけわかんねー…」


ハッハッ、と遠い目をする椿。


(……また欲求不満で襲ったと思っているんですか…)


鈍感な椿が漸く自分の気持ちに気付いたのかと思いきや、いつものごとく思春期の欲情と思われているようだ。

骸は落胆する。







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あきゅろす。
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