楽しむ黒猫
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続いて目を向けるのは獄寺。
不良主人公もありきたりだ。
はぁ、と溜め息を溢す。
「なに他人の顔みてため息ついてんだ」
視線に気づいた獄寺はムスッと睨み付ける。
「いや…次の作品を考えててさ。不良主人公はありきたりだなぁて思って。あたしの作品、主人公が薄くてさ」
「たしかに…不良の主人公の漫画って多いよね」
「だしょー?まぁ、不良の主人公も嫌いじゃないけどさ。問題は外見なのだよ、綱吉くん」
ビシッと綱吉を指を差す。綱吉はびくっと背筋を伸ばした。
「主人公がなぁ…どうもヒロインばっか目立っちゃうのよ」
「ならヒロインを主人公に描くのはどうでしょうか?それなら主人公が映えるでしょ?」
頬杖をついてペンを投げ出せば、骸がそれを拾い意見を述べる。いい相談相手だ。
「題材はこの生活を描いてみてはいかがですか?漫画の世界の人間と同居するストーリー」
「んー…。それは少年誌じゃあウケないね。漫画の世界の人間がくるトリップネタは漫画以外で描かなきゃウケないと思うよ……」
想像してみたが、これは却下だろう。うん。
あくまで少年コミックだから。
「なんだよ…漫画はストーリー考えて絵をつけるだけの簡単なもんだと思ってたが、試行錯誤するのか」
「あったりめーよ!」
バンッとテーブルを叩けば、獄寺と綱吉は震え上がった。
「思い浮かべたストーリーをただ漫画にしてヒットするのは天才だけ!ヒットするにはめっちゃ考えなきゃダメなの!漫画なめんなよっ!!!」
すごい剣幕で言う椿の頭に、雲雀のチョップが落とされる。
「煩い」と一言。
「チョップしなくてもいいじゃん!痛いじゃんか!バカっ!」
「一々煩いよ、ちんちくりん」
「な、にぉ〜!!」
バッと立ち上がった椿。
仕返しの平手。を雲雀は読んでいた本で防ぐ。
ふん、と嘲笑う雲雀。
カチンときた椿。
「雲雀っ!」
もう片方で平打ちをしようとしたが掴まれた。椿は体重をかけて押すが、掴まれた左手は動かない。
ぐぐぐぐっ。
ねばって押し付けたが、体力が続かず椿は諦めて座り込む。
雲雀の膝の上。
いつの間にか雲雀の上に上がっていた。
一体これからどうすればいいんだ。
椿はフリーズした。
椿の左手を握りながら、雲雀もフリーズするがやがてチャンスだと気付く。
ぐいっ。
椿を引き寄せる。
鼻が触れそうな程、顔が近くなった。
これ以上は後ろに壁があるから引っ張れない。
でもこれなら思い出すだろ?
きょとん。
椿はただ。
きょとんとした。
その反応で何も思い出していないことは一目瞭然だ。
カチンときた雲雀は、頭突きを食らわせた。
「あひゃ」
「椿さんっ」
頭突きの反動で後ろに倒れかける椿を骸が受け止める。
それを見て、雲雀はトンファーを取り出して振るった。
気付いた椿は足で止める。
ソファーから落下しないように骸に背中を支えられ、雲雀が振り上げた腕を片足で押さえる椿は雲雀の膝の上。というなんとも可笑しなポーズで停止。
というかどうすればいいんだ?
ギロリと雲雀と骸は睨みあう。
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