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楽しむ黒猫
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僕は可笑しくなってる
この世界にきてから


君に出会ってから












小さな呻き声が眠りを妨げた。

うっすらと目を開けば、そこには骸の寝顔。


どこか、苦し気に眉間を寄せる。冷や汗が頬を伝う。


魘されているようだ。


骸も夢に魘されるのか、そう意外に思いつつ彼の髪に触れた。


優しく撫でれば、苦しそうな息を吐く。
それが熱くて、熱でもあるのかと額に手を当てた。


血の気が引いているのか、冷たい。微かに肩を震わせている。


椿は起き上がって骸の汗を拭った。

骸はそれでも起きない。


悪夢に溺れているようだ。


「…骸…?」


椿は眠っている他の彼らを起こさないように骸の耳元で呼んだ。


それでも起きない。


起こすのはやめて椿は横たわって骸を抱き締めた。


そっと背中を撫でて、落ち着くまで抱き締める。
胸に骸の苦しそうな寝息がかかるが、震えがおさまった。


骸の甘い香りと同じシャンプーの匂い。


それを嗅いで、目を閉じる。
















暫くしてまた目を覚ました。

左手を握られている。


うっすらと目を開いた。
骸の背中が見える。起きたようだ。


手を握り返せば、骸が振り返った。


辛そうにしかめられた顔が見える。


大丈夫…?
そう訊く前に骸は背を向けて横たわった。


眠気に負けて椿はまた眠る。







「椿さん」


骸の柔らかい声に目を覚ます。

目映い光。朝だ。


「おはようございます」


骸は優しく微笑む。
何事もなかったかのように。

その優しさはいつもと同じ。


最近の優しさとは違う。
上っ面の優しさ。


椿は身体を起こしてから、そっと骸の頭に手を置いた。


「大丈夫…?」


寝起きで声が掠れたが、骸には十分に届いた。微かに骸の顔が歪む。

骸は顔を背けた。


「大丈夫ですから」


そう言って立ち上がってキッチンに行ってしまった。


骸が、変だ。




 


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