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楽しむ黒猫
108



「椿、もう放っておいてください。彼は行きません」


六道骸が彼女の肩を掴み、彼女の目は奴に向けられた。

イラッとする。


「骸君、もうさん付けでいいんだよ?」


苦笑して食器を片付け始める彼女は僕を誘うのを諦めたのか立ち上がりキッチンに行ってしまった。


六道骸を見れば、彼は彼女を目で追っていた。

その目が…

凄く、ムカついた。


僕はソファに横たわって目を閉じた。
もう何も見たくない。
苛々が止まらないから。


肘で目を隠せば、彼らはなるべく声を潜めた。
バタバタと洗濯したり掃除したり…騒々しい。
早く行けばいいのに


「おっし!準備完了?
 雲雀君、行きましょ」


パンッと家事を終わらせた彼女が手を叩いた。それから僕の腕を退かして目を覗いてくる。

諦めてなかったの?


「行かない」

「行きましょう?」

「行かないって言ってるだろ」


彼女の手を振り払い、僕は軽くその額を叩いた。昨日とは違い化粧はしてない。

黒髪は耳の横で一本に縛られて短い前髪は頬を包むように垂れてる。


いつもの彼女。
彼女は叩かれた額をさすって膨れっ面をした。

いつもならそこで彼女が反撃するはずなのに…何もしてこなかった


「行こうよ、雲雀君」


猫なで声で見つめて彼女は言ってきた。何それ…反則だよ


「椿さん、放っておいて行きましょう」


口を開こうとすれば、六道骸が彼女の腕を掴み引っ張った。


「えー、でも」


彼女は僕を見たけどしかめた顔を見られたくなくって僕はまた腕で隠した。


「早く行けば」

「……じゃあ行こう」


言えばやっと諦めた彼女は呟いた。
彼らの足音が遠ざかる。


バタン、と扉が閉まり鍵がしまる音がした。

部屋はしんと静まり返る。


欲しいのはこの沈黙だ

賑やかな群れじゃない


静かがいい



ちらつく彼女の顔を忘れようと眠ろうとした。


暫く静寂を味わう


寝れるまで、何も考えずにした



可笑しい


いつもなら何も考えずに眠れるのに、考えてしまう



……六道骸の彼女を見る目…


嗚呼、ムカつく。


咬み殺したい…。


だけど彼女の料理が食べれなくなる…美味いとは言えないけど
ないよりまし。


昨日何したのかな…


嗚呼、眠れない。


くしゃりと髪を握り締める。


暫く天井を睨み付けていれば、携帯電話が鳴った。
鳴るはずのない携帯電話がなんで鳴るの?


取り出して画面を見る。


番号の上に“椿”って名前が出ていた。
何これ?登録した覚えないけど…


…椿って、彼女?
遊姫椿…だよね


「……もしもし?」

〔CiaoCiao。椿です〕

「…いつの間に登録したの?」


別にいつでもいいけど…

彼女の声が聴きたくて僕は聞いた。


耳元から聴こえる彼女の声
今なら眠れそうだ…


落ち着く…不思議な声…




 


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