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小説
愚か者は誰?                        双子座と女神。あと青銅達。甦り後比較的すぐ? ほのぼの








「……サガ。顔を上げて頂戴」
女神は困ったように眼の前にぬかずくサガに声をかける。
「……サガ」
それでも顔を上げないサガに、女神は彼の目の前まで歩み膝を折って彼の腕を取った。
「ア、アテナ…!!」
導かれるように顔を、上体を起こすサガ。女神は微笑む。
「貴方の罪はもう許されました。貴方自身それは分かっているはず。…いったい何にそのように…」
「嗚呼…アテナよ」
また頭を下げながらサガは涙を零す。
「どうしたのですサガ」
「貴女に深い感謝を……」
はらはら落ちる雫は、喜びの涙。
「あの時……、逆賊の…裏切り者の烙印を押された私に…。罪深き私に、最期にあの子に会わせて頂いた」
過ぎた恩恵に感謝をとサガは唇を震わす。
サガの言うのは冥王の走狗として女神の首を取りに来た時のことであろう。アテナは小さく微笑んだ。
「そのようなこと…。感謝は私ではなく彼自身に」
「いえ、アテナよ。あの子は私を許さない…。永遠に許さないでしょう…」
「………サガ」
ため息一つ。言って良いものかどうか悩んだが女神は言った。
「サガ、それは被害妄想です」
「いいえアテナ!けしてそんな事は…」
どこからその自信は来るのかしら…。
すると、傍にいた瞬が女神に耳打ちをする。
「…カノンは復活してからずっとサガに辛く当たるんです…。人目もはばからず」
なるほど。…でもそれはカノンの愛……ね。
アテナはため息をつき言う。
「…なら、そこのカーテンの裏にでもいなさい。…いいですね。決して出てきてはいけませんよ」
「…?」
サガは疑問符を浮かべながらも女神の指示に従う。
「!?星矢…。それに紫龍に氷河」
「しっ。サガ、間違っても動揺して小宇宙燃やしたりするなよ」
サガが驚くのを無視し、瞬も一緒に隠れる。
その姿が完全に隠れたのを確認し、女神は声を上げた。
「誰か!誰かカノンを呼びなさい!!」



「……カノン。呼び出しに従い参上いたしました」
跪くカノンに女神は微笑んだ。
「顔を上げて頂戴カノン。今日呼んだのはほかでもないの。遅れちゃったけど、貴方に褒美をと思って」
「……は?」
ぽかんとした顔でカノンが女神を見返す。
「だって貴方、ハーデスとの戦いの時に随分頑張ってもらったみたいじゃない。星矢達から聞いてるのよ?」
「いや…。アテナ。貴女に忠誠を誓いし者として当然の事。どうぞ、そのような心遣いは私の様な罪人ではなく、他の者に」
「カノン…私は貴方に褒美をあげたいの。……それとも、私からじゃ、何もいらない?」
困ったように、少し愁いた様に女神が首を傾げればカノンは慌てた様に身じろいだ。
「滅相もありません女神…!!しかし、私ごときより、他に受け取るに相応しい人間がいると思ったまでで…」
お許し下さいと頭を垂れるカノン。
「いいのよ。…で、何が欲しいの?」
「…………アテナ」
「ええ」
いつになく真面目な顔でカノンが女神を見上げる。
「欲しいものが…いくつかあります」
「ふふふ。いいわ。一つに絞れなんて言ってないもの」
楽しそうに笑う女神にカノンは何かを決意するように深く息を吐き言った。
「私に双子座を任命していただきたい」
「…それはなぜ?」
微笑をそのままに女神は問うた。
「貴方は双子座の黄金聖闘士。それは今更の話ではない。ならば、貴方が真に望むのは…」

サガの双子座の剥奪。

「なぜ?」
「………アテナ」
「はい」
「…………二つ目の望みはサガを貴女様の護衛人…それが不可能なら教皇付きもしくは補佐等に任命していただきたい」
「なぜ?」
「……」
「…カノン」
女神は困ったように微笑む。
「貴方…サガを愛しているのね」
「…アテナ」
伏せがちだったカノンが顔を上げる。
その目にはサガと同じ透明な雫。
「……俺は、もうサガを失うことに耐えられない」
「……」
「あの愚兄は…俺を置いて二度も逝った。俺は……三度サガを失う事だけは避けたい…」
「…だから、貴方が正規の双子座として前線に出、サガを最も最奥たる教皇の所か私の所に置こうと考えた」
「…お許し下さい」
「……貴方が復活して以来、サガに辛く当たるのはサガを引き立てる為」

カノンッ。私は…
ハッ。相変わらずいい子ぶってんなあサガ。いいぜ。好きにしろよ。よかったなあ、昔みたいに俺という欠陥品を庇い隠す必要がなくなって!
違うっ。カノン、私を許せないのは分かっている…だが…!!
うるせえな!触るな!!
ツッ……!?

        双子座のサガ様はあのように自らの罪を悔いているというのに…
                  弟のカノンとやらは…
                         まったく持って粗暴な
          あれではサガ様が不憫だ
                          哀れな

囁かれる神官や雑兵の陰口。
必死に聖域に貢献し自らの罪を悔いるサガ。
サガを突き放し自らを悪とし彼を救うカノン。
嗚呼……。
女神は天井を仰いだ。
「…貴方は…サガの為に彼を傷つけることを選んだ……」
「……お許し下さい」
許して欲しいなんて思っていないくせに。
私を利用しようとした事も、サガに辛く当たることも…貴方が許して欲しいのは。
「……サガより先に逝きたいと…それが望み…」
「…はい」
それは晴れやかな笑顔。
カノンの笑みを見た瞬間、女神は息をのんだ。
「女神。この愚かな男の最後の望みは…」

サガの幸せにございます。

「……嗚呼」
天井を再び仰ぐ。誰も止めないだろう。人に生まれた幸せ。女神は涙を流す。
「……アテナ……!?」
「聞いていますか…サガ」
「!!??」
カノンが大きく目を見開く。
次の瞬間、脇のカーテンが大きく翻り青銅4人にサガが現れる。
「……サガ………!!」
「……………カノン…!!」
立ち上がり一歩引くカノン。
星矢達に促されるように一歩進むサガ。
両者の距離は縮まらず。
動揺し視線が揺らぐカノンを真っ直ぐ射抜くサガ。
「カノン……すまな…」
「何時も何時もそればかり!!」
「!?」
おののくサガにカノンは叫んだ。
「顔を合わせれば「すまない許してくれなくても良い私が嫌いでも良いだから」…!!誰が!!俺が!!いつ!!お前を許していないと言った!?嫌いだなんて言った!?いい加減にしろ!!」
「な……!だってお前は何時も何時も私に辛く当たるではないか!!」
「だからそれはわざとだって言ってんだろうが!!今の話聞いてなかったのか!?」
「そんなこと知るわけなかろう!?普通、嫌われていると思うわ!!」
「今知っただろうが!!それなのにまたお前は「すまない」なのか!?」
「その「すまない」は今までその事実に気付かなかったことに対してだ!!それこそ分かれこの愚弟!!」
「俺が愚弟ならサガは愚兄だろ!!」
「意味が分からん!!なぜお前が愚弟なら私が愚兄になるのだ!!」
「当たり前だろ!!今まで何もかも同じだったのだから!!だいたい……!!!!!!!」
そこで気が付いた。
「あ。お気になさらず」
「そうそう。気にしなくていいぜ」
いつの間に準備したのか、大きな丸テーブルを女神と青銅達が囲み、優雅にティーカップをかまえながら双子を微笑ましく見ていた。
『…………(汗)』
ここは教皇の間。勿論、普段からそんなでかいテーブルが有る訳もなく、いつの間に準備したとか、お湯とかどうしたのとか、白いクロスにテーブルの真ん中には花瓶と生花とか…何に突っ込んでいいものか。
「ほんと。気にしなくていいのよ?サガ、カノン」
「いえ…そういうわけには…」
「はい…アテナ……もう結構です」
「そう?」
と、女神は首をかしげると小さな声で「もう少し見ていたかったわ」などとほざいた。
「…で。二人はこれから仲良く出来そうかしら」
「……は」
「……女神」
「はい?」
小さく答えるサガに対しカノンは一言。
「騙しましたね」
「カノン…!!」
「ほほほ。よいのですサガ。でもカノン。貴方だって私を騙して利用しようとしたじゃない」
おあいこよ。おあいこ と、笑う女神にカノンは口をつぐみうつむいた。
「でもねカノン。貴方がサガより先に死ねるかどうかは分からないけど、戦闘になったら本当に貴方が前線に立てるかどうか分からないけど、サガが大人しく教皇補佐になってくれるか分からないけど…」
そして
「サガが…貴方が幸せになれるかどうか分からないけど……共に生きなさい」
いずれ答えは分かるでしょう。その時がくれば。
「だから二人に命じます」
「はい」
「ハッ」

「サガをシオンの補佐。つまり教皇補佐に。カノン。貴方を私の護衛に命じます」

『!?』
「双子座は当面、二人とも正規とし、状況により判断」
あーやれやれ。肩こっちゃう と言わんばかりにアテナは首を回す。
「沙織さん。こっちでクッキーでも食べよう?紫龍がお茶を入れてくれたよ」
「ありがとう瞬」
「サガとカノンもどうだ」
「いや…私達は……」
「…サガ。氷河の言う通りだ」
「……は?」
カノンの言葉に呆気に取られるサガ。
「女神。ご一緒して宜しいですか?」
「ええ勿論よカノン。さあサガもどうぞ」
「え…ええ」
促され、おずおずとカノンの横に座る。
「サガ…」
「…なんだカノン」
ぶっきらぼうに目を合わせずにカノンは一言。
「すまなかった」
「……!!…私の方こそす…」
「言ったら殴る!!言ったら殴るからなサガ!!」
「な…!!何でお前はなぜそう我が儘なのだ!!」
「誰が!!そういうサガこそ…!!」
言い合いを始める二十代後半の双子。
「…平和ねえ」
「そうだね」
微笑ましく見守る十代組。

さあ、お茶が冷めないうちに召し上がれ。







あとがき
ちょい長めかな…普段が短すぎ。
サガに「最期の時にあの子に会わせていただいた」を言わせたいが為に書いた。
あとちょっと鬼畜なカノンが書きたかっただけ。でも 兄の為 みたいな。
青銅達も出しました。瞬の性格が扱いやすい。あと星矢。
紫龍と氷河が書き分けられない…。落ち着いた雰囲気なのが紫龍。必要以上しゃべらないのが氷河。つまりどっちも台詞が発生しない…。
最初しんみり、途中アテナの「それは被害妄想です」発言でギャグ化しそうになりそのあとシリアス化しそうになりグダグダに終わる…。最悪だ



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