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小説
奇跡とは起こすもの                       女神と双子。甦り後すぐ ほのぼの?




 




「……良い風ね」
少し遠くを見るような目で女神アテナは言った。
それに対して片や礼儀正しく「はい」。片や困惑顔で「はあ」。
「……どう?少しは落ち着いたかしら」
「お気遣いいただき恐縮ですアテナ。心身共に影響ありません」
サガが顔を伏せ答えるのを黙って聞いているカノン。

……ここは教皇宮の裏。
殺伐とした裏庭のようなところで、なぜかアテナとサガとカノンはいた。
理由は簡単。…アテナが呼び出したから。
「そういうことを聞いているんじゃないんだけど…」
「は?」
困ったような顔で微笑む女神。
驚いたようにサガが顔を上げる。
横では小さくカノンがため息を吐く。
「……」
眉を寄せ、カノンを見上げるサガ。
嗚呼…………。
アテナは視線を逸らすと適当に歩き出した。
「ア、アテナ…!?」
「アテナ。そちらは…」
双子の声を耳にアテナは崖に向かい歩く。
そして
そのまま身を投げた。
「アテナアアアアアアアアアア!!??」
絶叫したのはサガかカノンか。
2人は同時に飛び出し、光速のスピードをもってアテナの腕を取りに行く。
彼女の腕を取ったのはサガ。一緒に落下していくサガの腕を取ったのはカノン。
「グッ……」
全ての負荷がカノンに掛かり彼の口からうめきが漏れる。
「カノンッ。何があってもはな……」
「離すか!!サガこそ死んでもアテナの手を離すな!!」
怒鳴り返すカノン。
重くは無い。だが、姿勢が微妙だ。
右手にサガ。左手で辛うじて崖の淵を掴み、正座をしたような格好。
クソ……。この姿勢じゃ引き上げられない。
サガもそれに気付いたのだろう。一瞬思案気な顔になる。
嫌な予感…。サガは思慮深いように見せかけてやる事なすこと大胆だ。
「……カノン」
「……何だ」
「いくぞ!受け取れ!!」
「はあ!?」
本当に「はあ!?」である。
なんとサガは右手に吊るしていたアテナを力一杯上へ放り投げたのだ。
「おまッ……!!!!」
放物線を描きながら自分の高さ以上に飛ばされてきた女神を両手で受け止める。
「アテナッ。お怪我は……」
「そんなことよりサガが!!」
横抱きにされたアテナがカノンの腕から飛び降り、崖っぷちに再び行こうとする。
「お任せを…!!」
アテナを押し止めカノンは躊躇わず崖を飛び降りた。

サガは両手を上へ伸ばしたまま重力に従っていた。
深い谷だ。教皇時代は気にしたことがなかったがこんなに深いものだったのだろうか。
あの頃は絶望してよく崖上に来ていたが…。
嗚呼。…………来た。
上に伸ばされた手が取られる。
「サガ!!」
そのまま引き寄せられ抱きすくめられる。
そして、落下していく方角に巨大な小宇宙が放たれるのを感じる。
嗚呼。
今は……。カノンがいる。………独りじゃないから。…………落下さえ心地よい。
「行くぞサガ!!」
巨大な三角に呑まれる瞬間、なんとなくサガは微笑んだ。


「………お帰りなさい」
崖上に異次元経由で戻ってみると、そこには微笑んだ女神。
「アテナ…何故、崖に飛び込んだりしたのです…」
「だって2人ともしゃべらないんだもの」
『はあ!?』
見事に双子の声がかぶった。
アテナは笑う。
「復活してから2人が話をしているところを見たことがないって皆が訴えてくるのよ?どうしたら話してくれるかしらと思って」
「たったそれだけの為に御自ら危険を冒したのですか……?」
「そうよ」
けろりとした顔で女神は答える。
「な……なんて無茶な…」
「あら。恐怖なんてなかったわ。前にも星矢と崖から飛び降りたことがあったもの」
「自慢になりませんアテナ」
よろめくカノンに額を押さえるサガ。ほがらかに微笑むアテナ。
嗚呼。
「…それで。サガ、カノン」
「はい」「はっ」
風を背に、女神は問う。

「……どう?少しは落ち着いたかしら」









あとがき
奇跡とは、人が起こせる唯一の神の力。
とかなんとか海皇編でポセイドンか誰かが言っていたような…。
神本人に奇跡を起こしてもらいました。
復活後、まともに口の聞けない双子をアテナがなんとか会話させると言う設定で。
リアルに考えて気まずいでしょうね。
13年ぶりに再会した片割れなんて。どんなこと話したらいいんだ…?みたいな
2人とも懐かしむような13年を過ごしたわけじゃないでしょうし。




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