小説 ありがとう 双子座弟と翼竜 甦り後 ※死にネタ注意 「サガ!!」 突き飛ばされた俺の体は、銃弾を受けながら吹き飛び山間の崖から落下。 最後に俺が見たもの。 それは上半身が爆散したサガの姿だった。 平和の徒・女神の聖闘士。 彼らは、世界に悪がはびこる時、聖衣を纏い正義のために拳を振るう。 だが―― 守るべき世界が彼らを悪と断定した。 戦争の責任を負えとばかりに、理不尽な役回りを彼らに押し付けた。 皮肉なことに国々は団結し、聖闘士という名の犯罪者を追い回した。 女神が真っ先に殺され、激怒した複数の聖闘士が暴徒と化した。 …………女神を殺した人間。暴徒と化した聖闘士…………………………すべて、教皇シオンが粛清し、女神への謝罪の祈りを示した後、自害した。 残された聖闘士は、まさか守るべき対象を殺すわけにいかず、ただ逃げ惑った。 聖衣を身に着けなければ聖闘士と気付かれない。 だが、聖衣を身に着けなければ現代の兵器に太刀打ち出来ない。 聖衣を身に付け、己を守れば、攻撃を全て跳ね返してしまい相手を傷付ける。 完璧なジレンマに挟まれたまま、一体どれだけの聖闘士が生き延びたか。 「アあ…………………」 崖の下。カノンは頬を地面にふっつぶし、息絶えようとしていた。 馬鹿馬鹿しい人生だった。 兄に岬に繋がれ神を裏切り甦らされて挙句このざま。……阿呆らし。 目を閉じ、最期の時を待とうとしたその時。 「…カノン?」 「…………?」 閉じたばかりの目を開き、横目で見上げる。だが、視界は白く何も見えない。 だが見る必要は無い。この小宇宙は……。 「…ラ、ダマ…ティス……」 「貴様、何に……嗚呼、守るべき人間にやられたのか」 冥闘士翼竜のラダマンティス。 彼はあっさりと人が傷つく事を言う。 「死にそうか」 「は……」 よりにもよって人生最大の敵に逢ってしまった。 笑いたくても笑えない。 「…ころ…す、か…?」 「……殺して欲しいのか?」 真面目に答えてくるラダマンティス。 「……どっ、ちでも……」 「……ならば今は殺さん」 「…は……?」 理解できずにカノンは眉を寄せた。『今』は? 「貴様は全力で潰す。こんな所でくたばらせはしない」 そう言うとラダマンティスはカノンを軽々と抱え上げた。 嗚呼………。 「ラダ…」 「ん?」 薄れいく意識の中、カノンは今言わねば後悔する言葉を必死に口にした。 「………がと…」 「…ん」 想いは簡単に口に出来ないし言葉にならないけど。 これだけは言える。 ありがとう。ツライ時に傍にいてくれて。 ありがとう。何度も否定された俺を肯定してくれて。 ありがとう。 ……ただありがとう。 あとがき 蘇り後何年か後? デスマスクの言っていた「狡兎死して走狗煮られる」をやってみました。 世界が平和になったら、皆が「アテナも聖闘士も要らなくない?」って話になって聖闘士達が追い回される。 恩を仇で返された聖闘士。でもサガなんかはあんまり抵抗しなさそう。自分に無頓着というか話せば分かる、無駄に血を流すなって思いそう。んで、カノンとかかばって死ぬ。 アテナが殺された時、白銀聖闘士なんかが暴徒と化しそう(青銅は無気力化しそう)。 この後、冥界で傷の回復したカノンは再び地上に戻り、たった一人、名ばかりの教皇として聖域を再建させてくとかなんとか。それを影からさり気無くラダマンティスが助けてやったりとか。 [前へ][次へ] |