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小説
誰も知らぬ処刑                           双子座弟と女神のやり取り。微妙に『装飾品』の続き物風 ※死にネタ注意









サガが処刑された。
最期まで…首を落とされるその瞬間まで彼は………否。
首を落とされる瞬間こそ、彼は幸せそうに笑った。
デスマスクは言った。
「あんな笑顔、十三年間見たことねえ」
アフロディーテは泣いた。
「サガが死ぬなら私もついて逝きたい」
シュラは顔を伏せた。
「せめて…俺の手で逝かせたかった…」
だからカノンは答えた。

「お前等は生きろよ。それに自害は禁じられただろ。アテナに」

そして一人、教皇の間に向う。




「双子座カノン。呼びだしに従い参上いたしました」
「…カノン」
女神の隣には教皇シオンと射手座のアイオロス。
女神は玉座より降りると跪くカノンの傍に寄った。
「カノン…。サガの事……ごめんなさい」
「…いいえ」
神にとてどうにもならない時がある。
サガへの断罪は誰も望んでいなかったが、彼自身が犯した罪と時がそれを望んだ。
「それでね、カノン。貴方には…」
「恐れながら女神、私カノンは双子座を返上いたしとうございます」
「!?」
「何故だカノン」
驚く女神に代わってシオンが問う。
「…何故」
カノンは顔を上げ、答える。
「私はサガが愛した聖域を愛しています。ですが、同時に、サガを奪った聖域を憎んでいます。
私はサガを救ってくれなかった女神を憎んでいます。ですが、同時に、私は女神を敬愛しています。
私は…。聖域の、アテナの敵にはなりたくありません」
「…双子座を返上し、いかにする」
「聖域を出ていきます」
「ならん」
シオンは即刻切り捨てた。
「ならん。お前は…」
「海皇の下に行く気はありません。…ですが」
ゆるりとカノンの視線が鋭くなる。
「許していただけないというのならば…こうするまで!!」
「!?」
バッと立ち上がり、カノンは女神へ拳を振るう。
「カノン!!」
嘆きの悲鳴を上げるのは女神。
シオンが女神の肩を掴み引き寄せる。
アイオロスが間に入り…

破壊の打撃音と鈍い肉の音。

「ガッ……あ……!!」
カノンの胸を撃ち抜くアイオロスの腕。
「カノン…!!」
顔を歪め、言外に「何故だ」と問うアイオロス。
カノンの手はアイオロスに撃ち抜かれる瞬間に下ろされていた。それは攻撃の意思表示がないということ。
なのに何故……!!
「カノン!!」
ずるりと引き抜かれる腕。支えを失ったカノンの体は仰け反り仰向けに倒れた。
シオンの手を抜け、駆け寄る女神。
カノンの胸からは大量の鮮血。どんなに小宇宙を燃やしても、どんなに小宇宙を注いでも助からない。
「…ア……テ、ナ………」
ぜいぜいと喘鳴の息を吐き、カノンは囁く。
「お、許しを……。自、決は…禁じ…られ……」
「ごめんなさいごめんなさい」
涙を流し謝罪する女神。カノンの苦悩を分かってあげられなかった事実を。こんなにもサガを慕うカノンを。
「アイ…ロス。…すま、な…い」
「…………カノン…」
カノンの瞳から涙が零れる。
「嗚呼…サガ……今、逝、く…から」
「カノン…カノンッカノン!!」
「ア…テナ……」
死ぬなと、言外に滲ませながら悲鳴を上げる女神。
カノンの瞳が女神に向く。
だが、その視線は女神をとらえず。

「……………サガ

ゆっくりと瞼を落し、吐息のように兄の名を呼びカノンは死んだ。
「……そんな……………」



ただ、死の帳が辺りを包む。














あとがき
繋げたつもりはないけれど、微妙に『装飾品』の後日談みたいになってしまった。
私個人的には、双子は死ぬとしたらサガが先。
処刑でも病死でも戦死でも何にしても。
それで、弟が後を追う。神話で先にカストルが死んだからそんなイメージなんですかね。
カノンを殺すのを誰にしようか悩みました。
最初の候補は友達のミロ。
でも彼は技が微妙だからなあ。
じゃあアイオリア?英雄の弟だしちょうど良いか。と思ったんですが教皇の間に女神達といる理由が思いつかない…。
じゃあもう良い。英雄本人に殺してもらおう。彼、技ないし。
本当は弓矢で心臓撃ち抜いて欲しかったんですが、女神と彼の位置近いしな…と思って直接撃ち抜いてもらいました。
自害駄目。聖域から出たら駄目。双子座解任駄目。じゃあ、しょうがない。誰かに殺してもらおう。みたいな感じで。




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