小説 お食事しましょ 双子座と天馬 甦り何年か後 どっかと聖戦中 聖戦が始まれば聖闘士は四六時中聖衣姿。 故に、簡単に摂取出来る乾燥した食べ物…糒や干し肉、ドライフルーツ、カロリーの高いナッツのようなものを食べるのが普通。 「なあ。サガ達、食事してる?」 すべては星矢のこの台詞から始まった。 「……何言ってるんだ星矢」 簡素な教皇服に身を包んだサガが拍子抜けしたように言う。 「摂っていないに決まっているだろう?」 「何で!?」 本気で驚いたらしく、食いつくように星矢はサガを見上げる。 「何故って…」 何を聞かれているのか良く分からないといった顔で、サガが困惑する。 「……あのな。星矢」 「うん」 横で先ほどまでサガと今後の聖戦の進行と、進軍の打ち合わせをしていた聖衣を纏うカノンはため息と共に言う。 「何をそんなに不思議がっているか知らんが、お前たちだって似たようなものだろう?」 「え?俺、ちゃんとご飯食べてるよ?」 上記のような食事を『ちゃんと食べている』に入れて良いのか疑問だが星矢は答える。 呆れてカノンが答える。 「……お前…。サガを倒しに来た時、途中、どこかの宮で飯を食ったか?」 「お嬢さんが矢で射られた時の事?そんなわけないじゃん。そんな暇なかったし」 「じゃあ12時間以上食事どころか水も飲まなかった…だろ?」 「そうだね」 「……で、お前は何をそんなに不思議がっているのだ」 カノンが、『不可解』と眉を寄せる。 「だーかーらー。別に今は聖戦中だけど戦闘中じゃないじゃん。なんで飯食わねえの?」 「……あのな。俺達に限った事じゃない」 「星矢。黄金聖闘士は誰も食事をしてないし、水も飲んでない」 「だから何で?」 「いつでも戦場にいける様にだ」 カノン、サガと交互に答えてくる。 「戦場に行く時に、腹に物が入ってたら邪魔だろが」 「それに、血液が消化を行う為に体内を廻るから…星矢は経験ないかな?食事の後、すぐ運動するとお腹が痛くなったりする事」 「ああ、うん。あるね」 「困るだろう?」 「うん。戦闘中に腹いたくなっても困るし、トイレに行きたくなったらもっと困るもんね」 「「……」」 がっくりと力の抜けるカノンと苦笑するサガ。 「じゃあさ、白銀たちは?」 「それこそ師匠に聞けよ。お前の師匠、白銀の鷲座だろ」 「魔鈴さん?怖くて聞けないよ」 「白銀たちは、多少は食べてるだろう。水もね」 意地悪く笑うカノンと助け舟を出すサガ。 「黄金はまったく食べない。白銀は少々の食事と水。青銅はある程度の食事。それ以外…例えば雑兵や神官は普通に食べていると思うよ」 「……、シオンは?」 「食べてらっしゃるよ。実質、牡羊座はムウなのだから」 「サガは?」 「…私は食べていないよ」 「何で?」 サガとカノンは顔を見合わせる。星矢はかまわず続ける。 「戦場へはカノンが行ってるよな?サガは軍師を務めてる。じゃあ食べても問題ないんじゃない?」 「…星矢、あのね……」 「俺が死んだ時の為だ」 言いにくそうに、困ったように、幼子に諭すように、腰を折って話をしようとするサガを遮りカノンがぶっきらぼうに言う。 「俺が死んだら、すぐにサガが出陣できる様にだ」 「カノン…」 居たたまれない顔をするサガ。 「なあ」 そこに下から星矢が見上げて言う。 「じゃあ、なおさら大丈夫じゃん。サガ」 「…何がだ……?」 晴れやかな笑顔で星矢は言う。 「カノンがやられるわけねえもん。サガは安心だな」 「「……」」 食事の話が、いつの間にか安心の話に。 「あ。俺、そろそろ瞬と番の交代だ」 「あ、嗚呼…」 困惑する双子を残し扉に走っていく星矢。 扉に手を掛け、振り返りニッと笑う。 「じゃあ、後で二人で食べろよ。…あ、カノンは駄目か。じゃあ、サガに食べさせてやれよ」 「…え?」 振り返れば背後の机の上にはいつの間にか白いハンカチ。その上には乾燥した無花果の実が数粒。 悲しいかな。聖闘士のずば抜けた視力のせいでハンカチの隅の刺繍まで見える。 刺繍には『SAORI』とある。……サオリって。 「アテナ――――――――!?」 「おい!星矢っ、お前これ!!」 「じゃっ、確かに渡したぜ」 叫ぶサガに慌てるカノン。晴れやかな笑顔で扉の向こうに光速で消える星矢。 「いつの間に…」 「は…ははは」 呆然とするサガ。 カノンは笑い言った。 「さすがだな。まったく、言うだけ言って行きやがった」 「…どうしようか」 「アテナのお心積もりだ。サガ、無駄にするな」 「…カノンも一つ」 「……一つならいいか」 まるでいたずらをするように笑い合い二人は実を摘んだ。 あとがき 聖戦時って食事どうするのでしょうね。 星矢達って十二宮編ではざっと十二時間無飲食だったわけで…(汗) すごい…。あれか?小宇宙でどうにかなっちゃうとかか。 ちなみにマイ設定ではそんな感じ。黄金のお兄さん達は食事しなくてもぜんぜんOK 耐えられる、みたいな。小宇宙でどうにかなっちゃうみたいな。 上記小説は蘇り何年か後。 どっかと聖戦中。 天界あたり?そうするとなんとなく三界共同戦ってイメージがあります。 いいねえ。思いっきり敵だったバイアンと星矢が互いを庇い、背中合わせに戦ってたりラダマンティスとカノンが背中合わせに戦ってたりしたらいい。 [前へ][次へ] |