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小説
もしも お前が……         13年前双子 もしも射手座が教皇で、すぐ海皇戦が始まったら ※死にネタ注意






嗚呼。
出来ることならカノン。お前が立つその場に、私が立ちたかった。

                    サガ視点 


カノンが目覚めさせた海皇はすぐさま偽りの海将軍を召集し、間を置かずして聖域に攻め込んできた。
速過ぎる進軍。早過ぎる聖戦
聖闘士は幼い。女神はまだ赤子である。
本当は、私が最前線に出て戦うべきなのに、私は教皇の間にいる。
シオン様には五老峰の老師の所に行ってもらった。実質、避難という形だがそれを言うとシオン様は激怒するだろうと、アイオロスが信書と偽って白紙をシオン様に持たせて発たせた。
そして、私はアイオロスに女神を抱かせ、言ったのだ。

「お逃げ下さい。アイオロス教皇」

彼は渋った。
だが、私は言ったのだ。「最後に女神をお守りするのは貴方でしょう」
アイオロスは行った。
女神を抱いて。射手座の聖衣を負って。
聖域は壊滅した。
速過ぎる進軍。早過ぎる聖戦
聖闘士は幼かった。女神はまだ赤子である。
本当は、私が最前線に出て戦うべきなのに、私は教皇の間にいた。
…………幼かった聖闘士達は死に絶えた。
私はただ待ち続けた。
嗚呼。
出来ることならカノン……。









嗚呼。
出来ることならサガ。お前が立つその場に、俺が立ってやりたかった。

                    カノン視点 


アイオロスが教皇に任命され、サガは双子座兼教皇補佐として生きる。
サガには耐えられなかったのだ。
幼すぎて頼りない聖闘士達も。何一つ持たず無力で生まれた赤子の女神も。
笑顔を振り撒き無理をして、常に頼られ縋られ続け。
人間らしさを失い、サガの内は壊れてしまった。
嗚呼。岬に閉じ込められ。死線をさ迷い。海皇を誑かした。
世界が、聖域がサガを苦しめるなら。
そんなものはいらないのだ。
偽りの海将軍。偽りの海将軍筆頭は聖域の石段を登り行く。
真の海将軍は幼過ぎた。世界を粛清した後にでもゆっくり呼び集めれば良い。筆頭も含めて。
所詮、自分とて偽りなのだから。ただ、今が時なのだ。今落さなければ。すべてを犠牲にして。
何もいらない。すべて無に返す。
偽りの海魔女が雑兵をつれて、逃げた教皇と女神を追った。やがて首を持ち帰るだろう。
俺は教皇の間の門前で立ち止まる。雑兵に待機命令。
彼等は略奪がしたいらしい。「好きにしろ」と答えておく。
そんなものはいらないのだ。
偽りの海将軍。偽りの海将軍筆頭は聖域の石段を登りきる。
真の海将軍は幼過ぎる。世界を粛清した後にでもゆっくり呼び集めれば良い。筆頭も含めて。
…………偽りの海将軍達は死に絶えた。
俺は扉に手をかける。
嗚呼。
出来ることならサガ……。







嗚呼。
出来ることなら……
「……久しいな」
「……嗚呼」
微笑みを浮かべ、壊れたサガ。
見せる表情無く、愛深きカノン。
「……カノン。なぜ」
「……サガ。なぜだ」
互いに思うことは唯一つ。
「私が聖域を壊す立場になりたかったのに」
「俺がお前の代わりに全部背負ってやったのに」
なぜ。
なぜ私が兄で。
なぜ俺が弟か。
「…サガ。聖域は堕ちた。やがて地上も沈むだろう」
「……」
「聖闘士も海将軍も死に絶えた」
「……まだ」
「……」
「まだ私達がいる」
「…そうだな」
「まだ………」
「サガ」

終わりにしよう

「……」
「一人にはしないから」
カノンは偽りの海龍を捨てた。
散らばる鱗衣。
「……カノン」
「ん?」
サガは双子座を捨てた。
散らばる聖衣。
「……カノン」
微笑んで両腕を広げるサガ。
「……嗚呼」
無表情に歩み寄るカノン。
言葉など要らない。ただ、互いの背に腕を回す。

その手にはいつの間にか神具。

片や神殺しの宝剣。
片や三つ又の鉾。

嗚呼。互いの背に向け一突き。
「ガッ……!!」
「グッ……!!」
刺すだけでは飽き足りず、そのまま自分の体に届くまで刃を突き入れる。
串刺しになった双子。
「はは……見ろよサガ…」
「嗚呼……これで…」

けして離れない。
けして離さない。

「……」
「……」
体合わせ足を絡め
顔を見合わせ唇あわせ
背中に回した腕を交差させ
嗚呼
血の一滴骨の欠片繊維一つ誰にも譲らない
小宇宙を高めただ共に

銀河と共に砕け散る。






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