[携帯モード] [URL送信]

novel
不憫なカメラマン
 彼は、町の小さな新聞社の専属カメラマンである。報道写真を中心に、市井のスナップなどを撮ることが多い。優しい視点の構図は、そのまま彼の人柄でもある。昼夜問わないハードワークの職場にも関わらず、穏やかに写真を撮り続けてきた。

 が、そんな彼だからこそ、ここ最近は心労が絶えないのである。原因は、破天荒で傍若無人、天上天下唯我独尊を地でいく相方である。違法すれすれの無茶苦茶な強行取材が多く、しかも近頃は、ジュニアスクールに通う少年たちを執拗に追いかけている。「女の勘が、なにかあるって言ってるのよ」と主張する彼女に、ダメと言えないのはやはり惚れた弱みなのか。件の少年たちからも同情される始末な毎日で、胃薬が手放せない。やぼったく小汚いシャツを適当に羽織り、重たいカメラを胸に下げ、くたびれたスニーカーで相方を追う。

 ところが、そんな相方フォローばかりの日々でありながら、案外生き生きしているのである。結局、猪突猛進の相方といいコンビなのだろう。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!