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novel
専業主婦・Kの密かな楽しみ
 親友は、郷を出て結婚し、その数年後、顔も性格もそっくりな幼い娘を残して他界した。私は郷に残ったまま、その親友のお兄さんと結婚し、息子と娘をもうけていた。寂しかったけど幸せに過ごしている。

 旦那はすごく威張りんぼさん。理由も言わずアレしろコレしろって。息子たちが反発したくなるのも仕方ないと思う。ほんと、口下手な人。不器用な人。とても妹を愛していた人。大事にし過ぎて、言い方が乱暴になっちゃって、妹からは煙たがられてたっけ。それをいっつも悲しんで愚痴ってた。私は知ってる。それで十分だった、この人と結婚しようって思うには。郷から出るつもりもなかったし、問題なかった。

 でも、ちょっと特殊な家柄の、しかも長男の嫁。大変だろうなあ、ってぼやいたら、旦那の妹でもある親友は、なにを今さら、と笑った。お兄さんと同じ笑い顔で。その顔が好きだった。

 だから、いかに旦那にその顔をさせるか、それが私の忙しい主婦業の合間の楽しみのひとつ。

 旦那には一生の秘密。


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あきゅろす。
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