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novel
優秀で寡黙な秘書
彼にとっても寝耳に水の人事で、
総務部から社長付き秘書に移された。
それが入社1年目のこと。
理由を訊いた彼に、社長は
「私は人を見る目があるからだよ」
と言って眼光鋭く笑った。
鵜呑みにするのはかなり危険だ、
と彼が思ったのは賢明である。

それから5年。
社長の12人の子どもたちの連絡役を、つつがなくこなしている。
月に一度は様子を見に、
彼らの家を訪ねることも忘れない。
訳あって、社長と子どもたちは一緒に暮らしていない、
という事情に深く首を突っ込むこともしない。
主な対応係である高校3年生になる長女とのやりとりも、
常に事務的。
あくまで仕事上の付き合いという姿勢を崩さないのである。

学生時代の友人たちに言わせると、
どこか冷めた奴、ということらしい。だ
が信頼は篤い。

身長はそれほど高くはないが、
細身のせいで高く見える。
サラサラのストレートヘア。
口もとが少し下がっているが、マイナスの印象にはならない顔立ち。

キャリアの行方が判然としない青年である。


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あきゅろす。
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