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novel
悲劇の結末を悟る少女・H
田んぼの畦に立ち、風の吹く方へ顔を向けて立っている。
胸のあたりまで伸びた長く細い髪が、
風に遊ばれなびいている。
されるがままに、少しうつむく。
なぜか口元がほころんでいる。

不思議な少女だった。

その集落一の地主の娘。
そのせいでクラスメイトから距離を取られているのかと思えばそうでもなく、
彼女自身が友人らと戯れるのを拒む雰囲気を放っている。
集落の大人たちは遠巻きに、でも愛想よく彼女を扱う。
だが裏では薄気味悪そうに眺めている。

幼少の頃、神隠しにあった。

彼女に近づいた男たちは次々に謎の死を遂げた。

集落の氏神に寵愛されていると噂されていた。

うつむき加減に話す癖。白く細いうなじ。
16歳にしては大人びた微笑。空虚ささえ漂わせる笑みだ。

なぜ自分がこんな風に扱われるのか、
その苛立ちはとうに消え、
残ったのは深い闇と焦げついた熱。

彼女は、
自分の運命に気づいているのかもしれない。

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あきゅろす。
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