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novel
オカマの喫茶店マスター・H
その喫茶店は、一本、道をはいったところにおもむろに建っている。
よくある町の喫茶店。
店内に入ると、お世辞にも広いと言えないのに
グランドピアノが置いてある。

カウンターの奥に立つ青年がマスター。
穏やかな笑みを絶やさない。
サラサラの長髪をひとつに結わえ、
長い指先を器用に動かし、コーヒーをいれる。
視線を落とした時の顔の輪郭が、妙に色っぽい。
身長も高く、キレイな手指で、肌もなめらか。
所作も流れるようで美しい。

「いらっしゃい、ゆっくりしていってくださいね」
近所の高校に通う女子高生たちが一様に残念がるのは、
このマスターがオカマであるためだった。

マスターのそんな人柄のせいなのか、この喫茶店には、
ヤクザも水商売の女の人もニューハーフも不登校の中学生も、
なぜか居心地よさそうに長居する。

時々、マスターの義理の妹だというボーイッシュな少女が遊びに来る。
マスターは可愛がっているようなのだが、
店に来ることには困っているらしい。
そんなやり取りが毎度される。

柔和なマスターだが、頑固者らしい。
そしてオカマということを差し引いても、
やっぱりちょっと風変わりな青年なのである。

が、本人は店内のカウンターの奥で、いつも幸福そうにコーヒーを入れている。

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あきゅろす。
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