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novel
“実は教授”な父親・S
ネクタイを締めても、どうもサラリーマンには見えない。
キリッとキビキビした雰囲気がさっぱりないのだ。
お人よしの営業マンにすら見えない。
それが、40歳を越えた男の風貌なのである。

大学の教授である。専門は民俗学。
各地に残る風習や信仰の傾向などを調べ、研究している。
細かく繊細な調査方法には定評があり、学生たちとの関係も良好である。
若くして教授になったこともあり、将来有望株である。

私生活はといえば、妻とは10年近く前に死別。
駆け落ち同然で結婚し、あまり楽な生活をさせてやれなかったことに、多少の負い目があった。
いまでも彼女は幸せだったのだろうかと、
後悔ともいえない想いが胸をよぎる。
娘が一人。
高校生になり、ますます亡き妻に似てきている。
どこかはかない印象とか…。
ただ、身の回りのことにどこか無頓着で大雑把な彼をよそに、
しっかり者に育ってもいるので、
父親としては喜んでいいと思いたいけれど、
少々複雑な心境である。

だが、何があろうと娘を守ろうと思っている。
頼りないと思われていても、父親なのである。

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