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叶わないと知っていても
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好きだから、堪えてきた。
どんなに貶されても、嘲笑われても君がいれば全て良かった。


───けど、君は違ったんだね。


雨の中、傘を持つ手が震えた。
冬の夜、しかも雨の日は凍える程の寒さだ。
僕だってそんな日に公園のベンチに一人傘を手に座っているなんて馬鹿なこと普通しない。
でも彼が会いたいって言ったから、彼の頼みだから僕は来たんだ。
じゃなきゃ…来ない。
周りを見ても誰もいない。
人の気配すらしないから少し心寂しくなる。



───もしかしたら彼は来ないのかもしれない。



そう微かに不安を覚えた時、携帯に付けてる彼の部屋の合鍵が揺れた。
いや揺れたのは携帯が震えたからだった。
僕は着信を知らせるバイブを止めて、携帯を耳に当てた。



「和樹、こんな時間にどうしたの?」



『“どうしたの?”じゃねぇよ。

お前約束の時間だからとか言って家出てから五時間も経ってるぞ!』



電話の相手は弟の和樹だった。
声は怒っているようだが和樹の言葉に僕は時計を見た。
もう、五時間もこにいたんだ…。



「ホントだ」



『だーかーら“ホントだ”じゃねぇ!

またあの男静樹のこと呼び出したクセにすっぽかしやがって…!』





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